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五十三.たくさんの想い

 大晦日は大掃除、正月は初稽古に寒稽古、色々せわしいねん。
 それはもう残念そうな顔をして、隼はせわしく東京を発っていった。翔一郎と瞬が二回目の見舞いに来た日の午後だった。
 
隼は東京にいた三日間、実によく動いた。二十五日は雪で来られないと連絡してきた沢村に
「俺やっとくさかい、かまへんで。あ、そんでな、俺慈恩と斗音の友達やねんけど、今日から二人、しばらく島根のうちに来はるんや。せやから、クリスマスと大晦日と正月、ゆっくりうちで過ごしてや。また来てほしなったら、前もって連絡するさかい」
などと、口からでまかせとはいえ、上手く嘘八百を並べて牽制し、しっかり布団を干して片付け、みんなで使った居間の掃除をし、あの信じられないほど煙草の煙を吸い込んでしまっていた部屋にも徹底的にてこ入れをした。無理矢理カーテンもシーツも毛布も洗い、消臭剤をかけまくってソファやベッド、カーペットまでも馬鹿力で外へ運び出して干し、寒風も何のその、部屋の窓を開け放って空気を入れ替え、バリバリと掃除機を掛けた。やにでうっすら茶色くなっていた壁紙までも、沢村が掃除に使っていたらしい天然素材の強力クリーナーを使って、綺麗な白に戻した。まず、それを一日でやり終えたのだから、大したものだ。ただし、午後に迎えに来た近衛とその運転手は、思い切りこき使われたのだが。
 正直そういうことにあまり慣れない近衛は、午後だけでとことん疲れ果ててしまったのだが、その上連れ帰ってきた隼は、夕食の前に稽古をしないと身体がなまると言い張った。無理矢理近衛の家に設けられている、この家のたった一人の息子のための、小さいとはいえちゃんとした道場に引っ張っていき、地獄の稽古を味わわせてくれたのである。やっぱりこいつは化け物なのだ、と、近衛は心の底から実感させられたのだった。
 翌日は斗音の意識が戻ったと聞いたが、まだ少し不安定で会える状態ではないということだったので、隼は潔く諦めた。そして、せめて一目、意識の戻った斗音に会って帰りたい、ということで、二日目は世話になっているからといって近衛家の道場をぴかぴかに磨き上げた。(しかも、また近衛を巻き込んだ。)
「あらまあ・・・・・・お客様にこんなに綺麗にしていただいてしまって」
 ふふふっ、とあくまで上品に微笑んで、近衛の母は何気に喜んでいた。
「悠大さんに素敵なお友達が増えて、本当に頼もしいこと」
「他人事だと思っておられませんか?」
 床にへたり込んで、死ぬ思いで恨めしげに母を見上げると、隼はにこぉっと微笑んだ。
「ほんま綺麗なおふくろさんやなあ。俺、どこぞの美人演歌歌手がきはったかと思たわ」
 からからとお世辞にも聞こえる本音をさらりと言う。そして、目をキラキラ輝かせながら近衛の手を引っ張った。
「ほしたら、昼までまんだ時間あるさかい、軽く竹刀だけでも振ろか」
(凡人を怪物と同等に扱うなよ!)
 そう心で叫んだ近衛だったが、自分の三倍はよく動いて道場の掃除をした隼の前で、弱音は吐けなかった。結局昼食をとってからも、しごきかと思える隼の普段の練習につき合わされ、シャワーを浴びて部屋で死んでいると、更に使った道場を磨き上げてきた隼が笑顔でこう言った。
「なあ、明日は斗音と慈恩の見舞い行って、さすがに実家帰らなあかんし、見舞いと土産こうときたいんやけど・・・・・・東京、案内してくれへんやろか?」
 げ、と青ざめた近衛が、思わず首だけ隼に向けた。
「明日の午前中に行って買えばいいだろ?」
 冬にも関わらず汗に濡れた短い髪を、隼はうーんと唸って掻き上げる。
「せやけど、それやと明日の稽古どないするん?俺、新幹線でも島根まで結構掛かるさかい、午前中にやっとかんと、午後は無理やで?」
 あくまで自分の計画で進めようとする隼に、近衛は力尽きて天井を仰いだ。
「・・・・・・分かったよ。もう、好きにしろって・・・・・・」
「おおきに!したら、最速でシャワー浴びるさかいな!」
 きっと満面の笑顔で言っているのだろうが、それを見る気はとてもおきなかった。とりあえず、一言だけぼやいておく。
「いや・・・・・・ぜひゆっくり浴びてくれ」
 もう、隼相手に仮面をかぶるなんて、そんな気も起きなくなっていた。・・・・・・実質近衛が隼と共にした時間は二日ほどだったが、まさしく嵐が駆け抜けたかのようなせわしさだった。
「・・・・・・お前、痩せたか?」
 見舞いに行って聞いた慈恩の第一声がそれだったのだから、どれほどしごかれ、こき使われていたのかがうかがえるというものだ。
 それはともかくとして、近衛は意識のある斗音を初めて見た。あの夜、雪の中で見た姿よりは、かなり生気を取り戻しているようだった。日本人としては、かなり薄い茶色の瞳がとても綺麗で、印象的だった。
「斗音!よかったわぁ、ほんま。ずっとお前に会いたかってんけど、かんにんな。なかなかチャンスがのうて・・・」
 切なくも明るく振舞う隼に、小さな花がほころぶように微笑むのが、綺麗だと思った。声を出してはいけないらしく、小さな手振りと頭の動きだけで、一生懸命意思の疎通を図ろうとしていた。
「何ていうか・・・・・・すごい儚げな美人だな」
 とても柔らかそうなソファーに、身体の負担にならないような姿勢で掛けている慈恩が、その言葉に少しだけ笑った。
(そう言えば、慈恩を見てそう思ったこともあったっけ)
 その「美」は少々異なった類のものかもしれないけれど、さすが兄弟だと思う。その兄の方が、その頼りなさげな視線を近衛に向けた。小さく首を縦に振ったのは、会釈だろうか。
「桜花剣道部主将の近衛悠大だよ。あっちの学校では、一番の友達だ」
 そう慈恩が口添えしてくれたのが嬉しかった。綺麗な薄茶の瞳が瞬いて、ふわりと笑みが咲く。軽く目を伏せるようにして、唇が何か言葉を刻む。
「どないした、斗音?・・・・・・慈恩が、お世話になってます・・・・・・?」
 隼の解説に、近衛は思わずかぶりを振った。
「とんでもない。世話になってるのは、俺たちの方だ」
 初対面の相手にも関わらず、なぜか自分を表面的に飾ろうとは思わなかった。隼も慈恩も、既に自分の素顔を知っているし、他人だといって遠ざけておく気が全く起きなかったのだ。
「あの・・・・・・俺はよく事情を知らないんだけど・・・・・・大変だったな。・・・・・・何ていうか、その・・・・・・慈恩が心配するから・・・・・・早くよく、なってくれよ」
 透き通るガラスのような瞳に見つめられて、思わずしどろもどろになってしまった近衛だったが、隼の「初恋の相手」というのもうなずけない話ではない、と感じた。こくり、とうなずいたこの少年を女の子だと思い込んだとしたら、相当な美少女に見えるだろう。
 見舞いに持ってきた、かごに盛り合わされた果物の中から、冬にも関わらずよく熟した桃を一つ取り上げ、隼が器用に皮を剥く。慈恩が出してくれた皿に切った実を載せ、更に一番甘いところを細かく削いだ。それをそっと斗音の口に含ませてやる。斗音は少し驚いたようだったが、微かに口を動かしてからにっこり微笑んだ。
「甘いやろ?これ、めっちゃええ桃なんやで。悠大がな、ほんま目玉飛び出すほどのお坊ちゃまやねん。店で一番ええ果物ばっかぽーんとこうてまうから、俺なんか心臓止まるか思たわ」
 くすくすと笑う兄弟に思わず耳が熱くなる。隼をたしなめた。
「お前ね、人に送るものの値段とか、言わねえから、普通」
「値段はゆうてへん。さすがにそこまでアホやないて」
 自信満々に言う隼の頭を、思わずぺし、とたたいてしまった。
「言ってんのと大差ないっ!」
「え、そうか?お前、えらい細かいやっちゃなぁ」

 はたかれた頭を撫でながら嘆く隼に、近衛は脱力し、慈恩と斗音は声に出さないものの、更に身体を抱えるようにして笑っていた。

   ***

 その日に東京を離れたのは、隼だけではなかった。
「年末年始ってのは、普通故郷で過ごすもんだろう」
 斗音が入院してから二日目以降は、慈恩のために個室の隅にもう一つベッドを入れてあった。そこで深い黒のスーツをまとい、長い脚を組んだ安土が、膝の上で肘を付く。斗音のベッド脇でたたずむ嵐は、何を言うでもなく、「Jion」の頭をぼんやり撫でていた。
「明日珍しい症例のオペがあるんです。その経過観察から全て、研修に行ったドクターたちと研究していたんですから、オペに参加できなければ、何のためにドイツに行っていたのか分からないでしょう」
 拓海と安土のそんな会話を聞きながら、慈恩は少し不思議な気持ちで嵐を見つめた。まさか拓海が日本に長期間いなかったなどと、考えたこともなかったのだが、似たようなシチュエーションを例えにして嵐と会話したことがあった。その時の嵐の様子に、やや違和感を覚えた記憶があった。
「まあ、俺としては目的を果たせたわけだが、それでもゆっくり一緒に飯くらい食いたかったな」
「目的?」
 ふと気に留めたように、嵐が安土を振り返る。安土はきりりと形のいい眉を軽く上げた。
「言ったろ?クリスマスにプレゼントやるって」
「俺はプレゼントだったんですか?」
 呆れたように、それでも静かな雰囲気を壊さない医者が、思わず問い返す。安土はにやりと笑った。
「クリスマスに帰って来い、なんつったら、お前がそれに気づかないはずないだろう?」
「それどころじゃなかったですよ。何が何でも二十四日までに帰って来なかったら、嵐を・・・ひどい目に遭わせてやると脅迫されて」
 斗音たちを気にしたらしい拓海は、一瞬言葉を選ぶ。その気遣いを暴力団組長はさらりと流した。
「俺はそんな生ぬるいこと言ってねえぞ。監禁して」
「黙れこのサド男」
 非難の塊が声となって安土の言葉を遮る。嵐の眼光は鋭い。
「てめえ、またそうやって滝さんの仕事、邪魔したのかよ」
「またとは聞き捨てならんな。ドイツから呼び戻したのは初めてだろうが」
「まあ・・・・・・しばらく患者の容態も安定していて、特に俺が必要だったわけじゃない。結果的には斗音のオペをすることもできたんだから、一概に間違っていたとも言えませんが」
 苦笑すら魅入られるほど美しい拓海が、嵐をなだめて安土を立てる。とても大人の対応だ。それでも嵐は眉根を寄せる。
「俺を下品なだしに使ったのが気に食わねえ」
 はっ、と安土が笑みを吐き出す。
「お前以外のどんな餌に、この堅物が喰い付くってんだ」
「餌、というより脅しでしょう」
 仕方なさそうに吐息して安土を諫める滝は、下手をすれば童顔の美丈夫より大人に見える。この落ち着きぶりで十九歳というのが、むしろ嘘である。
 不意に一人掛けのソファから立ち上がっていた慈恩の指に、細い指が弱々しく絡まる。
「?」
 身体をこちらに向けて横たわる斗音が、枕元のメモ帳を指す。なかなかジェスチャーで伝えることのできない言葉を、斗音は筆談で補うようにしていた。力が入らないためあまりに弱々しい字は、視力に不便を感じたことのない慈恩でも読みづらい。一番上の紙を破り取る。
「・・・・・・斗音」
 その意志を確認すると、白い顔が浅くうなずく。
「いいじゃねえか。餌だろうが脅しだろうが、お前にとっても最高のクリスマスプレゼントだろう」
「その心遣いだけはありがたく頂いておきます」
 だけとは何だ、と東洋医学の天才が反駁するのに、慈恩はようやく口を挟んだ。
「あの」
 大人二人(に見えるが、あくまで片方は十九歳)が、言い合いをとめて慈恩を見る。会話を遮ったことに対する不快感を二人が(特に暴力団の現役組長が)全く感じていなさそうなことに、慈恩はとりあえずほっとした。白い紙切れを握り締める。
「あの、斗音が・・・・・・滝先生に申し訳なかったって・・・・・・本当なら嵐や斯波さんと素敵なクリスマスを、送るはずだったのに・・・つきっきりにさせてしまって・・・・・・」
 慈恩の声は白くてこぎれいな部屋に、妙に響いた。拓海は柳眉を軽く上げた。そして、シーツを目のすぐ下までかぶってうずくまる斗音を包み込むように、穏やかに微笑んだ。
「・・・・・・お前が今生きてここにいる。それで嵐が救われている。・・・・・・俺にその手助けができたのなら、俺はそれでいい」
 一瞬、嵐の端正な顔に切なさが色濃く浮かんだ。長い睫毛がそっと伏せられる。慈恩はその言葉が意図する想いと微笑みの美しさに、思わず溜息をつきそうになった。
(何てできた人だろう。それに・・・・・・ほんとに嵐のこと・・・・・・)
 斗音の薄茶の瞳が瞬時に潤んだ。少し伸びて柔らかく流れるアッシュの髪を、拓海は優しく撫でた。
「気遣ってくれて・・・・・・ありがとう」

 きゅ、と閉じられたまなじりから、一粒雫がすべり落ちた。

   ***

 意外な見舞い客も、斗音の病室に訪れた。慈恩は既に入院の対象から外れていたが、斗音の傍を離れる気は全くなかったため、病院に泊まりこんでいた。九条の両親には、近衛の家に泊まりこんで剣道の練習をしている、などと取り繕って、詳しい話はしていなかった。のだが。
 淡い薄紅色のアンゴラの、襟元がゆるいタートルセーターに、やや光沢を帯びた濃いダージリンティーの色の上品なフレアスカートがよく似合う絢音と、くすんだ赤ワインの色のシャツに薄いベージュのカーディガン、黒のジーンズを合わせた雅成が、綺麗で豪華な花束と、高級洋菓子店で通った店の名のロゴが入ったケーキの箱を持ってやってきたのは、大晦日を三日後に控えた寒い日だった。
「お父さん・・・お母・・・さん・・・・・・なぜ・・・・・・?」
 驚愕に目を見開く慈恩に、絢音は痛々しいほど赤く泣きはらした目を潤ませた。
「・・・・・・近衛さまに・・・・・・お聞きしたの」
 それだけ言って、視線を落とした。
「・・・・・・斗音さん、これ・・・おいしいって・・・・・・有名な・・・ケーキなんです・・・・・・どうか・・・・・・受け取って・・・」
 斗音をまともに見ることができず、声を詰まらせながら丁寧に大きな箱を差し出す。はたはたと涙が床で弾けた。斗音の困惑したような視線が、慈恩に縋る。慈恩がその箱を受け取った。雅成が絢音を支えるように、その華奢な肩を抱く。
「すまない、悠大くんから事情を聞いて・・・・・・」
 深々と頭を下げる。絢音も肩を抱かれたまま、夫に習った。斗音が綺麗な眉を寄せて、息を飲む。
「本当にすまなかった!僕たちが君たちに関わりさえしなければ、こんなことにはならなかった。・・・・・・許して欲しいなんて、言わない。言えない。ただ・・・・・・せめて、謝らせて欲しくて、恥を忍んできたんだ」
 少しだけ顔を上げて、雅成は斗音を見つめた。そして再び頭を下げる。
「申し訳ない・・・・・・本当に・・・・・・本当にごめん・・・・・・ごめん・・・・・・」

 ごめんなさい、と泣き崩れた絢音に付き添うようにして花束を脇に置いた雅成も、膝を折った。
 
斗音の手が慈恩のシャツを引っ張る。振り返ると、怯えたように斗音が表情を強張らせていた。涙ぐんだ瞳で、弱く首を横に振る。その意を悟って、慈恩はケーキの箱を棚に置き、土下座をしようとする雅成の肩を押しとどめた。
「やめてください。俺も斗音も、こんなこと望んでません」
「それでも通さなければならないこともある!」
「これ以上斗音が傷つくことをしないで下さいと言っているんです!」
 はっと顔を上げた雅成に、一喝した慈恩はそっと息をついた。
「あなたたちは、俺たちに精一杯尽くしてくれようとしていた。そんなこと、俺も斗音もよく分かっています。・・・・・・そんなふうに、頭を下げないで下さい」
 ごくり、と雅成の喉が動く。そして、深く溜息をついた。
「・・・・・・君は、本当に・・・・・・僕たちには出来過ぎた子だ。・・・・・・絢音、この花を生けてくれないか」
 花束を押し付けると、絢音は力なくうなずいた。彼女が足取り重く部屋を出て行くのを見届けてから、雅成はゆっくり立ち上がった。慈恩に勧められるままに、見舞い客用の長いすに腰掛ける。
「・・・・・・ほとんど連絡らしい連絡も入れずに、君が帰って来なくなるなんて、おかしいと思ったんだ。それで悠大くんと連絡を取った・・・・・・」
 それから雅成は、ぽつぽつと近衛に聞いたことを話し始めた。途中、どこから手に入れたのか、立派な花瓶に美しく花を生けた絢音が入ってきて、雅成の隣にそっと座った。
 近衛家に連絡を入れるより先に、悠大本人なら慈恩の事情を知っているのではないか、と判断した雅成が、何とか彼に連絡をつけることができたのは、昨日だった。隼を東京駅まで送って行った近衛は、その足で雅成と絢音に会いに来てくれた。もちろん、近衛は詳しい事情を知らない。見たままのことと、現在斗音と慈恩が病院にいること。それを伝えた。慈恩のことをひどく心配する両親に、隠しておくべきではないと判断したのだろう。それは雅成にも慈恩にも、想像できた。どのみち隠し通せることでもない、と慈恩は思っていたので、近衛の判断を特に恨むこともなかった。
 近衛には分からなくても、近衛の見た事情から、九条夫妻はある程度何が起こったのか理解できた。やたら自分たちを斗音に会わせまいと、遠ざけるような言動をとっていた三神に、さすがに不審を感じ始めていたからだ。三神が斗音に何をしたのかまでは見通せなかったにしろ、彼が暴れて慈恩を傷つけ、如月の友人を傷つけ、近衛を襲おうとした。九条で絢音に仕えていた彼との相違を思えば、斗音を命の危機に追いやった原因がこの男にあったことは、容易に想像できた。
「三神は自分の仕事に傷を付けたことを隠しておきたかったんだろう。それを九条家に知られたら、確実に仕事を失うんだ。けれど、それが斗音くんの命を危険に晒してしまった。僕たちは本当に甘かった。三神の連絡が途切れがちになったときに、おかしいと思ったのに・・・・・・もっと早くに、どうして行動しなかったのか、悔やんでも悔やみきれない。これほどの後悔を、僕は初めて味わった」
 そう言って頭を垂れる雅成を、慈恩と斗音は顔を見合わせてから見つめた。九条夫妻にはそれ以上深いことを知らずにいてもらいたかった。彼らに罪はない。彼らは、ただただ、自分たちの幸せを必死につかもうとしただけなのだ。ただでさえつらい思いをしてきたこの夫婦に、これ以上つらい思いをして欲しくはなかった。
「斗音さん・・・・・・病院での、費用の方は・・・・・・私たちに・・・・・・任せて、頂けるかしら・・・・・・。私たち・・・・・・本当に情けないことですけど・・・・・・少しでも、あなたの親代わりで、ありたいんです・・・・・・」

 蚊の泣くような声で絢音が申し出た。これに対しても、二人は顔を見合わせた。この申し出をしてきたのは、九条夫妻が初めてではなかったのだ。とりあえず安土は、自分が施した治療に関して「本人や身内の承諾なく勝手にやったこと」だからと言い張り、本気で治療費を請求する気なら、かなりの金額になろうというところを、「百パーセント引き」のサービスにしてくれたし、その上病院での治療費も自分が払うと、拓海にそれこそ勝手に話をつけようとした。さすがにそれは困る、と慈恩が口を挟み、何とかそれを阻止した。保険証では雅成が斗音を扶養していることにしてあったため、どのみち九条の世話になっていることに変わりなかったが、手術だけでもかなりの実費が必要であった。もちろん、椎名家の財産でまかなえないことはなかったが、それに関してはありがたく申し出を受けることにした。実際、そうすることでどちらも救われるのなら、それに越したことはなかった。費用の負担を受け入れてもらえた九条夫妻は、少しだけ顔を上げて帰宅することができたのだ。

   ***

「たくさんの人が来てくれたのはありがたいけど、大丈夫か?疲れてないか?」
 微かに聞こえる優しい低い声は、どれだけ兄を心配しているのかが滲んでいた。斗音はそっと微笑んで、うなずいたに違いない。
「今日はもう休んだ方がいい。点滴は終わったら外しておくから」

 まだ点滴もしているのだ。自分が行ったことでまた心労を重ねさせるわけにはいかない。その思いが、病室の扉をノックさせることをとどまらせた。そのまま病院をあとにする。
 
空を見上げると、深い藍色の中に散りばめられたように細かい光の粒がくっきりと輝いている。早く帰らなければ、また放射冷却で道が凍るだろう。雪もとけきらないのだから。
「・・・・・・生きていてくれればいい。・・・・・・いつでも、会える」
 声に出すつもりもなくつぶやく口元からは、白い息がくっきり零れた。

 不意に外で聞き慣れたバイクのエンジン音が聞こえた気がして、眠りにつく狭間の意識で、斗音はうっすら開いた視界に、窓の外の景色を求めた。
(・・・・・・あの、音は・・・・・・)
 五階の窓に自分の求めた景色が映るはずもなく、それ以上意識を保つこともできなかった。
(・・・・・・来るはず・・・ないか・・・・・・)
「・・・・・・斗音?」

 一瞬外を気にしたように見えた兄に、ふと慈恩が気を留めたときには、斗音の意識は眠りの淵へ滑り落ちていた。

   ***

 年末年始を病院で迎えた斗音と慈恩には、毎日のように客が訪れた。一番頻繁に訪れたのは嵐で、必ず一日に一度は顔を出した。忙しいに違いないのにそうは見せずに、毎日斗音と慈恩の様子を自分の目で確認して、拓海に報告していた。そして、拓海からの指示を医者に伝えたり、慈恩たちに教えたりした。
「ずいぶん顔色がよくなってるから、できるなら動いたほうがいいって。でないと、急激に筋力が衰えちまったりするし。散歩するくらいなら外に出ても構わないってさ」
 年が明けて三日もした頃に嵐がそう言ったときは、斗音の顔が輝いた。
「そうなのか?十日ほど前に手術したばっかりなのに?」
 驚いた慈恩だったが、嵐は整った顔に自信ありげに笑みを浮かべる。
「最近では癌の手術した翌日に動けっていう医者だっている。まあ、特に高齢者がそうなんだけど、寝てる間に弱っちまったりもするんだ。斗音の場合はそれ以上に動く体力すら残ってなかったから、それを充電しなきゃならなかっただけで、十日も寝たきりの方が珍しいくらいだ」
「最近は結構動き回ったりしてんだけどな」
 苦笑する慈恩に、斗音は小さく舌を出した。体力が回復するにつれて、じっとしているのがむしろつらくなってきていた斗音は、自分の足でふらふら売店まで行ったりフロントまで出歩いたりして退屈しのぎをしていた。入院に慣れているので、どんなところで何ができるかは大体分かっているのだ。
 だって、ここすごく色々充実してるんだよ。
 声を出さずにそう唇で紡いで、文庫本や珍しい種類の紅茶の包みを見せた。こんなものまであるのだ、と言いたかったらしい。嵐は何だか誇らしげにうなずいた。
「あんまり動いちゃ駄目だろうって、九条のお父さんが携帯ゲーム機を見舞いに持ってきてくれるくらいに、徘徊してたからな」
 二日くらいは携帯ゲームも楽しんでいたが、やはり動きたかったらしい。各階に設置されているシャワー室にも最近は毎日通っているし、喫茶室のハンバーグランチを羨ましそうに眺めていたり、リハビリのトレーニングルームまで行って色んな器具を触っていたりと、慈恩が目を離すといなくなるので、慈恩は極力家に帰るとき以外は斗音についていた。そもそも、九条の家に帰るのは自分の着替えを取りにいくためくらいで、あとは椎名の家へ行って風呂に入ったり斗音に必要なものを持ってきたりする方が多かった。
「じゃあまた来るな。ああ、翔一郎たちが明日行きたいって言ってたから、明日はあいつらと一緒に来る」
 軽く手を挙げて病室を出て行く嵐を笑顔で見送って、慈恩はほっと一息ついた。
「明日はまたにぎやかだな。今日のうちに片付けられるもの片付けるか。うちに帰って洗濯してくるよ。ついでに何か必要なものがあればもって来るけど?」
 年賀状。あったら持ってきて。
 たくさん届いていた友人からの年賀状を、斗音は暇に任せて丁寧に返していた。そのためのパソコンやプリンターもこの病室に既に運び込まれている。慈恩の苦労の賜物である。それでも、斗音の唇が紡ぐ言葉をほぼ正確に読み取れるようになっている慈恩は、苦笑しながらうなずいた。
「分かった。じゃあ、夕方には戻ってくるから、それまで許可が出たからって羽目外すんじゃないぞ」
 ぐっ、とまだ細い親指を立てて見せる斗音に、また苦笑する。満面の笑顔は、まだ正常とは言いがたい白さのくせに、外に出たい気持ちがキラキラと溢れている。無理をしたら、また外にも出られなくなるということも分かっている斗音なのだから、くどく言い含めることはしない。さらさらのアッシュの髪をくしゃっと撫でて、慈恩は大きな紙袋を抱えて病室を出た。
 それを待っていたかのように、斗音はひょこっとベッドから降りた。もう熱はすっかり平熱に戻っていて、ここに来て初めて地に足をつけたときの、頼りない感覚は消えた。慈恩は心配するけれど、自分ではだいぶ回復してきているのも分かったし、動かなければ食欲もわかないし、入院生活を少しでも早く切り上げるためには動けるなら動いた方がいい、と経験から学んでいた。医者から駄目だと言われても、それを飲み込んで我慢しているよりは、その方がずっといいのだ。
 身に着けているのは、冬用の少し厚手の生地のパジャマだが、これは安土がプレゼントだと言ってくれたもので、なかなか高級なものらしい。外見は普通のおしゃれ着と変わらない毛織のシャツに見え、そのくせ肌触りがとても柔らかくて暖かい。濃紺に薄い水色の縁取りやチェックの折り返しがあり、上品な中にもかわいらしさがある。斗音としてはかなりお気に入りだ。けれど、外に出るからにはさすがにそれだけではまずいだろう、と、白のスリムなロングダウンコートを羽織る。これまたあの暴力団組長のプレゼントだ。入院すると分かった時点で、「とりあえず着る物がいるだろう」と、パジャマとともにとっとと見繕ってきた。誰かが口を挟む間もなかった。断るにも、こんな女性でも着られそうな細身のものは、斗音が着る以外用途もなかった。だから、こうしてありがたく頂いているわけだが、これもまた決して安物ではないのだろうという代物だ。逆に使わなければ宝の持ち腐れである。これ一つ羽織れば、パジャマでも外に出られてしまうという優れものだった。これまでもロビーなど、外の空気に触れそうなところへはしばしば羽織って出かけていた、お気に入りの一品である。
(暖かいな。薄くて軽いのに。絶対高いよなあ)
 そうは思うけれど、安土にそんなこと一言でも言おうものなら、厚意を踏みにじるなと罵倒されるに違いない。彼はやりたいことをただやっているだけなのだから。けれど、そんな風に思ってもらえる対象であるということが嬉しいと思う。自分にそれだけの価値を見出してくれているということなのだから。あれだけの人物が。
 あえてゆっくりした足取りで階段を下りる。エレベーターでもいいのだが、衰えてしまった足の筋肉を少しでも元に戻したい。つらくなったらエレベーターにすればいい。一階まで降りる頃には手すりにつかまりながらになっていたが、それでも軽く息を切らす程度でこられたことに喜びが湧き上がる。一時は身動きするのも身体が鉛のようでひどく重かったし、呼吸も苦しくて意識が飛びそうだったのだ。こんなに早く回復するなんて、自分でも思っていなかった。拓海と安土の治療が優れているのだ、ということも、何となくこれまでの闘病経験から感じていた。
 二重の自動ドアをくぐり抜けて、驚いた。周りがまるで森林に作られた公園のように緑に囲まれていたからだ。冷たい空気は澄んでいるのが分かる。肺に染み渡るような気がした。窓から見た景色が、妙に緑だとは思っていたけれど、まさかこんな風に緑に取り囲まれ、更に緑がずっと続いているとは。
(この病院、すごい)
 ゆっくりと深呼吸すると、すがすがしい空気に心身が洗い流されたような気がした。
(気持ちいい・・・・・・)
 五ヶ月前の自分だったら思わず駆け出していただろう。今は、それはできない。それでも、切らしていた息が整うのを待ちきれなくて、少しふらつく足取りのまま森の小道のような散歩道に足を踏み入れた。昼の陽光に照らされて、梢の雪がきらめいている。時折遠くで、枝を揺らしてそれが落ちてくるような音もする。さすがに正月の雰囲気が残っている中、この寒さで出歩く人間は少ないらしい。しんとした静寂が辺りを包んでいる。まるで異空間に足を踏み入れたかのような感覚に陥って、一番近くの立派な月桂樹に触れてみた。
(・・・本物だ・・・・・・)
 軽い疲労を感じて、そのままゆっくり前のめりにもたれかかる。額に滑らかな木の皮の感触が何だか心地いい。こんなに自然を感じるのは、どれくらいぶりだろう。自分の呼吸の白さが、何だか新鮮だった。
(・・・・・・森の妖精、とか、出てきそう)
 自分の発想の幼稚さに思わず笑ってしまったが、けれど、そんな雰囲気が確かにある。
 頭上でかさかさ、と葉を揺らすような音がした。鳥でもいるのだろうか、とふと見上げると、葉と葉の間から差し込む陽光に混じって、確かに小さなきらめきが零れ落ちてくる。そう思った瞬間に、白い塊が自分めがけて降ってくるのが目に映った。
(うわっ、雪・・・・・・!)
 首を縮めて大きな樹の幹にしがみつく。飛びのくほどの瞬発力は、今の斗音には望めなかった。
 バサバサッ
 雪の塊が当たって砕けて飛び散った。確かに、何かに当たった音を耳にしながら、何の衝撃も感じない自分をいぶかしむ。きょとん、と思わず閉じた目を開けた。
(・・・・・・?冷たく、ない・・・)
「・・・・・・冷てぇ・・・・・・」
 耳元で低い声を捉えた瞬間、斗音は自分の心臓が跳ねたのを知った。自分に覆い被さるようにしていた人の気配が、雪を振り払うのが分かった。
(・・・・・・どう・・・して・・・・・・)
 指が小刻みに震える。虚ろな記憶は夢と混じって、現実と区別がつかなくなっているけれど、最後に見たのは、あの日だ。慈恩からは、確かにあの場にいたことは聞いたけれど、それ以上は怖くて聞けなかった。自分から望んで失くした大切な存在。そうして、巻き込んで、傷つけて、苦しませてしまった人。
「・・・・・・おい、大丈夫か?」
(あ・・・・・・あ・・・・・・)
 膝がカクンと落ちるのを、どうすることもできなかった。目の前の樹の幹がぼやける。頬を伝うものがたちまち温度を失ってコートを濡らした。
「あ、おいっ・・・・・・椎名?」
 ぺたんと座り込んでしまった斗音に合わせて、気配が膝をつく。それが分かって、震える白い手を自身で握り込んだ。どうしたらいいのか、白く凍り付いてしまった思考では答えを出せなかった。声も出せない。振り返ることさえ、できない。どんな言葉を尽くしても、この人に自分が許されることは、あってはならない。そう心の声が自分なじる。ただただ何の見返りも求めずに、自分を受け止めてくれたその人を、酷い裏切りの言葉で切り捨てた。
「・・・・・・椎名・・・・・・」
 ふわりと背中から包み込まれた。
「・・・・・・・・・・・・泣くな」
 その背の暖かさに、目から熱いものがほろほろと溢れて零れた。その言葉は禁止でも何でもなくて、泣けばいい・・・と、そう言ってくれていた。涙が零れていくほどに、胸で凍りついた苦い痛みが、融けて流れ出していくのが分かった。その底なしの優しさが、心に甘い痺れを誘う。
「・・・・・・温かい・・・・・・・・・ちゃんと・・・・・・生きてんだな・・・・・・」
 こくん、とうなずいた。それしか、できなかった。腕に力が加わる。だんだん、強くなる。苦しいほどに抱き締められて、その力に込められた思いを知る。
「・・・・・・ちゃんと・・・・・・生きて・・・・・・」
 聞こえるかどうか分からないくらいの微かな声は、震えて詰まった。
(・・・・・・瓜生さん・・・・・・・・・・・・)
 零れ続ける涙が、自分を抱き締める腕を濡らしていく。その腕に、そっと白い手を重ねた。突き放した自分のために、あの雪の中、慈恩を連れてきてくれたのは、嘘でも幻でもなかったと、何の躊躇いもなくストンと胸に落ちる。身体を張って三神に立ち向かい、自分を守ろうとしてくれたその姿が、くっきり脳裏に甦る。
(・・・・・・・・・・・・瓜生・・・さん・・・・・・)

 自分を抱き締める腕を、そっと抱き締めた。

   ***

(斗音・・・・・・)
 瓜生に包み込まれるようにしてうずくまるその姿を、最上階の拓海の控え室から見守りながら、そっと自分の腕を抱きしめるようにした。
 迷って迷って迷って、結局何もしてやれなかった。あそこまで追い込んでしまった。恐らくあの瓜生にさえも、望まぬ言葉を言わせてしまったのだろう。
「・・・・・・ごめんな・・・・・・つらかったろうに」
 斗音にとって、瓜生の存在がどれだけ大きな支えだったのかは理解していた。一緒にいるところを見かけたのは数えるほどしかない。でも、あの様子を見ればすぐに分かる。互いに大切な存在だということは。
 カチャ、とドアノブが回る音がして、遠慮のない人の気配が部屋に入ってくる。
「よ。浮かねぇ顔してるな」
 にやっと笑みを載せる若い組長を、嵐は一瞥した。そして苦笑する。
「・・・・・・自己嫌悪が深すぎて、溺れそうだ」
「馬鹿だな。お前、どれだけ自分が万能だと思ってんだ」
「お前も言ったじゃねえか、俺は特別だって・・・っ・・・」
 一瞬身を引こうとした嵐の肩に、強引に腕を回して引き寄せる。
「奴らにとってはな。でも、俺から見たらお前なんてただの弱い一高校生だ。お前なんて、俺の力の前じゃなにもできやしない」
 やすやすと腕を封じられ、抗うこともろくにできずにあっさりと唇を奪われる。
「―――っ・・・やめ、ろよっ!」
 日本人としてはかなり珍しい、不思議な色合いの瞳が安土を射抜く。美丈夫はそれを受けて平気で笑う。
「ほら、な?」
「な、じゃねえ!」
 毛を逆立てる狼のような嵐の気色も、安土には全く歯が立たない。カラカラと笑われた。
「言ったろ、万能じゃねえって。俺ですらそうなのに、お前がそこまで人のこと背負えるか。あれ、見てたんだろ?」
 窓からかなり遠くに見える、瓜生と斗音の姿。本人たちを知らなければ、それが誰だかの判別は難しいだろう。
「あいつにはたくさんの支えがある。あのボクサー小僧もそうだし、慈恩にお前に、バスケ部の仲間もいる」
 小さく吐息して、今度は意外なほど優しい笑みで窓の外を見遣る。
「それに・・・・・・身体的なことはもちろん、あんなに強いとは思わなかった。あいつ・・・・・・もっと壊れてるかと思った」
「・・・・・・安土」
 ふっ、と目を伏せる安土は、男前だと嵐は思う。拓海に対しても常にそう思うのだが、安土は下手をするとそれ以上に、自分にとって心強い大人だ。
「心療内科は俺の領域じゃねえが、お前の話を聞いてて、もっとうつ病とか錯乱状態になってる可能性が高いと踏んでたんだがな。いや・・・・・・なってただろうな、一時は。でも・・・・・・今は少し不安定なくらいで、精神的にはほぼ健全に見える・・・根底にはまだ色々隠れてるだろうが、それにしても・・・なかなかそんな簡単に克服できるもんじゃねえ。弟の精神力も大したもんだと思ったが、下手するとあいつはそれ以上のものをもってるかもしれねえな。あと・・・それだけ周りとの絆や信頼関係も確立してたんだろうな。・・・・・・大した奴だ」

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