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二十六.新たな人間関係

 ふと目を開けると、光の大洪水が網膜を焼いて、斗音は思わず目を眇めた。腕を上げて目に直接注ぎ込む光量を抑える。何だか久しぶりに、眠ったという感覚だ。しばらくは目を閉じたら翌朝だったのに。
 そこまで考えて、がばっと身体を起こした。慌ててナイトテーブルの時計に目をやる。針が指し示すのは十時を少し過ぎた辺り。
「うわっ・・・・・・マジで?」
 ベッドから飛び降りようとした瞬間、膝に力が入らずに、ベッドから滑り落ちた挙句、床にへたり込んでしまった。
「・・・・・・へ?」
 直後、ものすごい勢いで階段を駆け上がってくる音がして、いつもより五倍増しくらいの強さでノックされる。
「斗音さん!入りますよっ?」
 返事も待たずにガチャッとドアが開く。すかさず膝をついて長身を折り曲げ、切れ長の瞳が斗音の瞳をのぞき込んだ。
「大丈夫ですか?どこか、ぶつけませんでしたか?」
「・・・・・・だ・・・・・・い丈夫・・・・・・だけど・・・」
 言った瞬間、力任せに抱き締められて、唖然とする。そんな斗音の首筋に、三神は唇を摺り寄せ、声を絞り出すように囁いた。
「・・・・・・よかった・・・・・・!」
 首筋がその息を感じて、思わずドキッとした。何が何だか分からない。三神がこんなに取り乱すなんて、珍しいなあ、などと考えた。
「また・・・・・・また倒れたのかと思って、心臓が潰れそうでした・・・・・・」
「・・・・・・倒れた・・・・・・?俺が・・・?」
 不思議に思って首をかしげる。三神が思わず溜息をついた。
「覚えておられないのですね。無理もありません。二週間ずっと無茶を続けてきたのですから」
 背に回された手が緩んで、そっと肩をつかまれる。
「・・・・・・昨夜階段を下りてきたところでいきなり倒れたのです。朝一番で九条家の担当医に診てもらいましたが、極度の過労だそうです。心身ともに、相当疲れていると・・・・・・」
「・・・・・・過労・・・・・・?それって、サラリーマンが長時間掛けてなるような症状じゃ・・・・・・」
 ちょっとショックを受けた斗音だったが、三神は真剣だった。
「そのとおりです。あなたは自分自身が気づいていないだけで、ひどく無理をしているのです。それこそ大人が長時間心身を酷使するのと同等の無理をしているんです。恐らく、私がここに来る以前から。あなたの身体はそれに耐えられるほど強くない。それを自覚してください」
「う~ん、でもなんか、過労って言うか、昨日はちょっとぼんやりしてたって言うか。そんな感じだったよ?」
 全く深刻さを感じていない斗音に、三神の眉間がわずかに寄った。そんな三神に、思い出したように言う。
「そうだ、遅刻っ!もう十時過ぎてるんだ!急いで準備し・・・・・・」
 最後まで言わせてはもらえなかった。今度は、背骨がきしむほどの力で抱き寄せられた。
「学校には連絡を入れました。今日は何と言おうと休んで頂きます」
 斗音が目を見開く。
「そんな・・・・・・如月祭は目の前で、今やらなきゃいけないことはほんとにたくさん・・・!」
「駄目です。如月は優秀な学校だ。いくらでもあなたのフォローができる人材はいるでしょう。あなたは一人しかいないんです。この世に一人しかいないんですよ!」
 思わぬ激しい口調に戸惑いながらも、斗音は困惑する。
「でも俺は慈恩の分もやらなきゃいけないんだ・・・・・・それに、じっとしてる方が・・・・・・」
 言いながら、だんだん表情が曇って、視線が落ちていく。三神が腕の力を和らげて、そんな斗音を見つめる。斗音の額が三神の鍛えられた胸にとすん、と収まった。
「・・・・・・つらい・・・」
「・・・斗音さん・・・・・・」
 確かに寝たとも思えないような眠り方しかできなくて、疲れは溜まっていくばかりだったけれど、それでも夢のひとつも見ずに済んだその睡眠が、斗音にとってはありがたかったのだ。例え自分が倒れることになっても。
 三神の表情が、苦味を含む。何かに耐えるように精悍な顔を歪める。
「・・・・・・慈恩様のことを、想うからですか」
「・・・・・・うん。考えないようにしようと思えば思うほど、切なくなる。納得して、あいつのこと傷つけて・・・・・・突き放したくせにね」
 あっさり認めて、うつむいたまま薄く自嘲する。
「寂しいなんて、言う資格ない。分かってるよ。だけど、当たり前みたいにいた存在がいなくなるって、こういうこと・・・なんだな。だから、ちょっとでも忘れている時間が長くなればいいって・・・・・・」
「・・・・・・駄目ですか?」
 つぶやくような低い声を聞き取れなくて、斗音は視線を上げた。
「・・・・・・え、何?」
 その視線は、真摯な黒の、切れ長の瞳に真っ直ぐに受け止められた。ただただ真剣なその瞳に、魅入られてしまいそうだ。
「私では。駄目ですか、斗音さん」
「・・・・・・駄目って・・・・・・何が?」
「あなたのお側に存在する人間として、私ではご不満ですか」
 少し苦しそうだ、と、斗音は思った。違う、とすぐに首を振る。
「三神はよくやってくれてる。不満なんてない。ただ、慈恩もやっぱり、この世に一人しかいないから、三神を慈恩と思えったって、無理だろ?」
 それでも、その苦しげな表情は変わらず、むしろより曇ったようにすら見えた。
「代わりになろうなんて、考えていません。慈恩様を忘れさせて差し上げたい。それだけです」
「忘れる・・・・・・?そんなこと、できるはず・・・・・・」
「他のことで心が囚われれば、満たされれば、忘れていられるのでしょう?だったら、それを私が」
 三神は言うなり、折れそうな腰を抱き締めて、深く口づけた。薄茶の瞳が大きく見開かれる。

(!・・・・・・三神・・・・・・っ?)
 押し付け、押し上げ、押し開くように熱く求めてくるその唇に、圧倒される。それだけで気がふれてしまいそうな想いの強さに、斗音は呆然とされるがままだった。ようやくその想いの塊が離れたとき、斗音は放心状態になっていた。そんな焦点の合わない斗音の瞳をじっと見つめ、三神は訴えかけるように、低く静かに言葉を紡いだ。
「あなたを・・・・・・愛しています」
「・・・・・・な・・・・・・に言って・・・・・・」
「冗談でこんなことは言いません。今までどんな人間にも、こんなに強い想いを感じたことはない。女性とか男性とか、そんなものを越えて、私はどうしようもなくあなたに惹かれているのです」
 力強い腕に抱き締められて、頭がくらくらする。どうしたらいいのか、全く分からない。かすかに首を横に振った。
「・・・・・・そんなこと・・・・・・急に、言われても・・・・・・」
「どうして欲しい、なんて、あなたに望みはしません。私があなたを癒してみせる」
 大きな手が髪を乱すようにしながら、自分の頭をその肩口に押し付けてくる。息苦しいくらいだ。一瞬掻き乱される思考の中で、ふと、心身ともに、この頼もしい青年に全て預けてしまえたら、楽かもしれない、と思った。きっとこの強い想いで、何もかも分からなくなるくらい、どうにかしてしまってくれる。あれもしなきゃ、これもしなきゃなんて追い回されなくても、自分が手放せない慈恩の影を思い出さずに済むかもしれない。さっきみたいに、キスされて、こんなふうに抱き締められて。それから・・・・・・それから?
(そんな・・・・・・そんな逃げ方で慈恩のことを忘れていくのか?そんなの・・・・・・)
「必ず・・・・・・癒してみせるから・・・・・・」
 首筋に唇が押し当てられる。温かくて柔らかい感触に添って、呼気が肌をなぞっていく。くすぐったくて、身体がぴくりと動く。パジャマの胸がはだけて、その感触がゆっくりゆっくり肌を滑り降りていく。長めの前髪がまた肌をくすぐる。訳の分からない心地よさと、背筋を駆け上がる悪寒に、無意識に身体が震えた。三神の長い指が胸のクロスに触れる。その瞬間、麻痺した斗音の脳が警告を発した。
(嫌だ・・・・・・っ!)
「やめて、三神っ」
 身をすくめて、大きく開かれた襟元をぎゅっとつかむ。三神は驚いたように切れ長の目を見開いた。
「・・・・・・斗音、さん?」
 戸惑ったような声音に、思わずその表情を見やると、驚きの中にはっきりと傷ついた痛みが見える。ズキン、と胸が痛む。お前はそれでいいのか、と慈恩が訊いてきたときに、その意図を知りながら自分は平気だと答えた。そのときに慈恩が見せた表情によく似ている。いつの間にか、自分の呼吸が荒いことに気づいた。
「あ・・・・・・俺・・・・・・あの・・・・・・ご、めん」
 襟元をつかんだ手に、もう一つの手を重ねる。かすかに震えているのが分かる。視界がぼんやりと揺れた。
「・・・・・・ありがと・・・・・・でも、ごめん・・・・・・俺、ほんとに・・・・・・分からない・・・・・・ごめん・・・・・・」
 薄茶の瞳から透明な雫がこぼれ落ち、一つ、二つと頬を伝って、重ねた手を濡らす。それを見つめる三神の目が眇められた。使用人の青年はしばらく苦しそうに唇をかんで、それからやっと言葉をこぼした。
「・・・・・・無粋なことをいたしました。・・・・・・申し訳、ありませんでした・・・・・・」
 ゆっくり手を引くと、静かに深く、頭を垂れる。使用人として、完全に一線を画した態度だった。まるで、二度と触れはしないと言わんばかりの言動に、斗音は一抹の寂しさを覚える。一瞬でもつらさから開放してくれるかもしれないと思った存在を、たちまち失ってしまったような。
 すっと立ち上がった三神を追うように、斗音も慌てて立ち上がろうとした。途端、すぅっと血の気が引いていくような感覚とともに、目の焦点がぶれて、膝が折れる。
「っ!」
 倒れるかと思った瞬間、強い力にそれを阻まれた。そして、微かな吐息を耳にする。
「・・・・・・お分かりでしょう?どれだけ身体が参っているのか。大人しくベッドでお休みください」
 抱き止めてくれた力強い腕。肩。胸。まるで慈恩のような。まだ思考がはっきりしないままにそう思ったら、急に不安と寂しさと、そしてわけの分からない焦燥感や喪失感が膨れ上がって、斗音の精神を圧迫した。
「・・・・・・斗音さん・・・・・・?え、と、斗音さ・・・・・・」
「ごめん。ごめん三神。俺やっぱり、駄目かもしれない」
 正気の保てないような精神状態を抑えんとばかりにしがみついて、溢れて止まらない涙ごと、顔を淡い黄色のカッターシャツにうずめる。
「駄目・・・・・・って・・・・・・何がです?」
「心の中がぐちゃぐちゃで、もうどうしていいか分からない。だから、ごめん、勝手でごめん、でも」
 力の入らない斗音の膝に合わせるようにして、三神がゆっくり膝をついて、そっとバランスの崩れた華奢な身体を支えた。その腕に、斗音は崩れた。

「今だけ傍にいてよ・・・・・・」

 結局自分の心身の疲れを自覚せざるを得なかった斗音は、その日一日休むしかなかった。情緒不安定なのも、進行しているのを無理に理性で押し殺していたのが、遂に爆発してしまったのだ。そこまではさすがに三神も把握していなかったが、それでも取り乱して泣き崩れてしまった斗音に付き添っていた。
「昨夜も結局飲まれませんでしたからね。落ち着きますし、糖分も摂れますよ。熱いですから、お気をつけて」
 温めたミルクココアを勧めながら、切れ長の黒の瞳を和ませて、静かに笑みを浮かべる。そんな落ち着きがまた、凛々しい弟を思い出させ、目頭が熱くなってしまう。
「すみません、熱すぎましたか?」
 涙ぐんだ斗音に気づいて、慌てて三神が気遣う。斗音はベッドの上で小さく首を横に振った。
「何でもないよ。美味しそう。いただきます」
 そっと口をつけると、やわらかな甘さがふわりと広がった。美味しかった。ほんの四、五口飲んだら、もう満腹中枢が限界信号を発信する。大きなマグカップの一割、飲んだか飲まないかだ。あまり申し訳なくて、もう一口、と口をつけた瞬間、不快なものが胃を押し上げてきた。これ以上口に入れたら、嘔吐するに違いない。なるべく不快感を表に出さないように、そっとカップをナイトテーブルに置いた。
「もう少し、冷まそう、かな?」
 そんな斗音を見つめて、三神はそっとほっそりした背を撫でた。
「・・・・・・無理を、なさらなくていいんですよ。あなたの食の細さは、正直尋常ではありません。食事でもおやつでも、摂れるときに少しずつでいいんです」
 優しい言葉に、いとも簡単にほろほろと涙がこぼれる。シーツがいくつもの雫で濡れるのを、三神は少し、目を細めて見つめた。
(これは・・・・・・相当きてるな。・・・・・・もう少し、様子を見るか)
「・・・・・・ごめん。本当なら自由にしていられる時間なのに、束縛するような真似して。その上こんな・・・・・・意味不明に泣いてばっかりで。自分でもよく分かんないしさ」
 涙に濡れた睫毛が窓から差し込む光できらきら光る。そんな顔のままで笑ってみせる。三神は思わず息をのんだ。本気で心臓を鷲掴みにされた気がしたのだ。
「何を・・・おっしゃるんです。これが私の、務めです。何よりも第一にあなたをお守りすることが、私の仕事なんですよ」
 ベッドの脇に膝をついて、斗音に目線を合わせる。
「それに・・・・・・申し上げたはずです。私は、あなたを愛していますと。・・・・・・冗談では、ないと」
「三神・・・・・・」
 かすかに戸惑う瞳に、三神は薄く微笑んだ。
「申し訳ありません。私はただの使用人です。そんな者の言葉に、あなたが心を乱す必要はありません。たわ言だと聞き流して下さっていいのです。・・・・・・ただ、その私が、あなたといられる時間が長いことを喜びこそすれ、不快に思うことなど有り得ないということだけ、覚えていて下されば、それで」
 斗音の美しい瞳がふるふるっと揺れた。またしても涙の幕が浮き上がって、そしてたちまち転がり落ちていく。見ているだけで切なくなるほどの、綺麗な泣き顔。思わず三神は優しく引き寄せ、その額を自分の胸に押し当てた。
「・・・・・・許していただけるのなら・・・・・・心の荷が少しでも軽くなるまで、ずっとお傍におります」

 抱き寄せた華奢な肩が、はっきりと震えた。しばらくすると、微かに嗚咽がこぼれ始めた。

   ***

 二週間をさかのぼった、慶應義塾大学付属桜花高等学校。九月一日。
「なあっ。お前さぁ、剣道で今年のインターハイに出たよな。俺らの学校は出てないけど、同じ地区だったじゃん。地区予選で俺らが負けた学校だったからさ、注目してたんだ」
 初めて見る顔だらけの学級で、新しい制服に身を包み、名前と一言「よろしく」の挨拶だけで淡々と自己紹介を済ませ、好奇心のこもった視線を一斉に浴びながら、それでも言われた席に静かに座った慈恩は、くるりと後ろを振り返ってきた好奇心旺盛そうな少年に、いきなりそう声を掛けられた。
「個人で全国三位だってな。それに、団体でもベスト4に入ったんだろ?如月って、結構スポーツに力入れてんだな」
 それなりにお行儀のいい学校のようで、私語というものがほとんどない中でのセリフだっただけに、それほど大きな声ではなかったにも関わらず、教室中に響いた。直後、ざわめきが起こる。
「静かに。確かに和田が言ったように、九条は剣道で、この夏のインターハイで全国三位の成績を収めている。うちの学校でも素晴らしい活躍をしてくれることを期待している。その話は、休み時間にでもゆっくり聞け。九条はうちの編入試験も素晴らしい成績で合格している。ライバルが一人増えたということで、気を引き締めるように」
 担任の櫻木という教師は、淡々とそこまで告げた。かなり厳格そうな中年の男だ。そこでショートホームルーム終了のチャイムが鳴る。慈恩の隣に座っていた少年が起立の号令を掛けた。どうやら彼が学級代表らしい。身長は慈恩くらいある。かなり鍛えられているらしいしっかりした身体だ。
「礼」
 黙礼がしっかりと行われ、その後の「解散」の言葉で、教室内は一気にざわめいた。慈恩の周りにどっと人が集まる。
「インハイ3位?本当に?すごいのね、かっこいい!」
「それで学力もハイレベルとはね。さすが如月」
「どうしてここに来たの?親の転勤?にしても、そんな離れてる学校でもないから、通えないことないか」

「ていうかさ、インターハイのときの名前、違ったよな。九条じゃなかった。確か、椎名」
 
前の席の和田が首を傾けて見せる。
「だろ?」
「え、なになに、じゃあ、ご両親の離婚?」
「てか、九条って言ったらすごく高貴なお家柄じゃないか。どっちかって言うと、再婚?」
 和田の肯定を求める問い掛けに答える間もなく、周りの生徒たちが好き勝手に質問してくる。正直、気が滅入りそうだったが、いきなり無視して印象を悪くするのもどうかと思って、微かに笑みを載せる。
「一言で説明するのは、ちょっと難しいかな」
 その困惑気味の微笑が、整った凛々しい表情を和らげ、女生徒たちの間にささやかな声がいくつも上がる。そんなことで、ああ、女子がちゃんと半分いるんだ、と納得する。男子生徒たちからは、やや失望の溜息がこぼれた。
「何だよー、もう女子のハートを射止めちゃってるのか?勘弁して欲しいなぁ」
「何にしても今は九条なんでしょ?九条家に子供がいるなんて聞いてなかったから、もしかして跡取り?」
「うっわ、お前ほんと最強じゃん。剣道できる、顔はいい、背は高い、頭もよくて人当たりもいい、それで九条家の跡取り?近衛と同レベルか、それ以上じゃねえか。きっついな~」
「なあ、俺と仲良くしようぜ。俺水無瀬誠呉(せいご)って言うんだ。水無瀬だっていい家だぜ。仲良くしといて損はないって」
「あ、わたくし山縣聡美(さとみ)。一応清和天皇から系譜がつながっているのよ」
「そんなこというなら、うちだって・・・・・・」
 たちまち自己紹介大会が始まる。慈恩はやや面食らった。家柄なんて今まで気にしたこともなかったのだ。自分がそういう意味でも「ターゲット」になったことを思い知る。それにしても、一度にそんな家柄自慢をされても、興味もないのに覚えられる訳がない。なのに、口を挟む隙もない。うんざりするのと困り果てるので、微笑すら保つ余裕がなくなったそのとき、隣から明朗な声が響いた。
「おい、チャイムが鳴るぞ。次、日本史なのに、準備してないだろ、君たち」
 一斉にみんなの目が自分の腕にした高級時計に向く。
「あ、本当だ!まずい、夏休み明け早々、あの人に叱られるのはごめんだ」
 蜘蛛の子を散らすように一斉に自分の席へ戻っていく。思わず、ふぅ、と息をつくと、隣の少年がくすっと笑った。かっちりとした号令のときとはだいぶ印象の違う、屈託ない笑いだ。うつむき加減で栗色のやや長めの前髪を軽く掻き上げて、理知的な唇の左端を吊り上げて見せる。
「日本史の箕浦さんは厳しいので有名なんだ。授業の準備ができてないと、いきなり十分以上の説教喰らうぜ。これからの休み時間もきっとあんな感じだろうから、気をつけな」
 からっとした口調に、好感を覚える。慈恩も思わず笑みをこぼした。
「ありがとう。えーと・・・」
 名前が呼べずに言葉を詰まらせると、少年はにっと笑った。
「悠大(ゆうだい)。悠長に大きくなれって書いて悠大だ。面白い名前だろ?」
「・・・・・・そういう捉え方も、なくはないけど・・・・・・?」

 悠久の「悠」に大きいという字を合わせて、そんなへんてこりんな願いを込める親もいないだろう。いろんな意味で大きな人間になることを望まれたに違いない。のだが。
 
悠大と名乗った少年はまたおかしそうに笑った。
「そんな返事も初めてだ。お前、面白い奴だな」
 物がいいのか、ほとんど音のしない教室の入り口が開かれ、かなり年配の女性教諭がカツカツとヒールの音にも緊張感を漂わせながら、入ってきた。細い銀縁のメガネを軽く指で押し上げながら、ちらりと慈恩の隣の少年に視線を送る。
「近衛!」
「はい。起立!」
 凛とした声が教室に響く。生徒が一斉に立ち上がる。先ほどよりも反応がいいようだ
「礼」
 先ほどより、黙礼も深い。
「着席」
 ほとんど音を立てず、速やかに生徒たちが座る。その礼儀正しさに、慈恩はこの女性教諭の恐れられぶりを実感した。そして、それよりも興味を引かれた隣の少年に、視線を向ける。近衛、と、そう呼ばれたこの少年。慈恩にも、その名字が有名な旧公家のひとつだと分かる。それなのに。
(それに、その名前は・・・・・・)
 授業中の近衛は、本当に立派な模範生だった。当てられれば教師の求める答えを過不足なく、明瞭な発音で返し、黒板に書かれなくても大切だと思われる教師の言葉はノートに記録している。そのノートも美しく整った字で、きっちりとまとめられている。教師の発問に誰一人答えられなかったりすると、高校生としては比較的珍しいが、挙手で答えられなかった生徒や、それで授業が滞りそうになって困ったりイライラしたりする教師に助け舟を出す。教師陣も、彼には相当信頼を置いているらしく、何かあればすぐに「近衛」と呼んだ。

 午前中の四時限はあっという間に終わり、昼食の時間になる。慈恩は自己主張の激しいクラスメイトたちに声を掛けられるより先に、隣の少年に声を掛けた。
「近衛、昼飯・・・・・・じゃなくて、昼食ってみんなどうするんだ?」
 九条に入ってから、祖父の重盛からくどいほど言われて、俗な言葉を矯正中の慈恩である。そんなセリフに近衛はまた笑った。
「俺には昼飯でいい。同年代の子供同士の会話だぜ。全く、いいお家柄ってのは厄介だよな」
 俺もしょっちゅう家で言われる、なんてぼやいて見せる。慈恩も笑みを返したが、この完璧な優等生が家でそんな失態をするとも思えなかった。その近衛は、周りの生徒たちが慈恩に集まる前に立ち上がった。

「あ、そうそう、飯ね。弁当があれば弁当。でもその口調からすると弁当はないな」
 
軽く顎で教室の入り口を指し示す。
「となれば学食か購買。俺は学食派だけど、お前はどっちがいい?」
「何も分からないからな。近衛に合わせる」
「じゃあ行こうぜ。ああ、それから」
 慈恩の素早い行動にやや慌てている数人を、長い脚で颯爽と置き去りにすべく、優美に整った早めの歩調で歩き始めた。早く来い、と賢そうな顔で促す。
「悠大って呼んでくれ。名字は好かねえけど、これでも名前はわりと気に入ってんだ。何でも悠長に構えるってのが、俺の信条なもんだから」
 慈恩は凛々しい眉を軽く上げる。
「やたら名字を強調する人が多いみたいだけど、悠大はそういうの気にしないのか?」
 大仰に肩をすくめて、近衛は舌を出した。
「俺は俺さ。俺は近衛の家じゃねえよ。近衛って名前出しただけで目の色が変わる奴を見るのがウザイだけさ」
「そんな人もいるんだな。ちょっとほっとした」
 凛々しい表情を崩して、くす、と笑う。そして、賢明そうな男前の顔をうかがった。
「ところで、悠大。もしかして、剣道やってないか?」
 目鼻立ちのはっきりしたその顔が、一瞬驚きを浮かべ、次にふっと笑みを湛える。
「やってるよ。ちなみに剣道部部長」
「え、部長?」
「まあな。でも、何で剣道やってるって分かった?」
「ん・・・・・・大会とかで、時々見かける名前だったから。今年の地区大会では見なかったけど・・・・・・」
 ヒュ、と小さく口笛を鳴らして、近衛は一度瞬かせた目を大きくした。
「よく覚えてるな。うちは小等部から先輩が多くて、基本的に学年別の大会でなければ、先輩が優先で選手に選ばれるんだ。それに私立だから、俺は小六と中三のとき以外は、公式大会なんてほとんど出てないぜ」
「そうか。道理で・・・・・・でも、出ると結構残ってる」
「お前ほどじゃない」
 即座に返って来た答えに、苦笑する。でも、記憶が確かならば、中三のときの中体連は、関東大会辺りまでその名前が残っていたような気がするのだが。
「もちろん、剣道部に来るんだろ?」
 結構な距離を歩いてようやく食堂にたどり着くと、なんとウェイトレスが丁寧にお辞儀して席まで案内してくれた。
「・・・・・・これほんとに学食?」
「紛れもなく学食だ。金持ちっぽくて嫌味だろ」
「いや、そんなつもりで言ったんじゃないけど・・・・・・びっくりした」
「まあ、ちょっとしたレストランみたいなものだと思えばいいさ」
 これまた丁寧に渡されたメニューを慣れた手つきで開く。
「ん~、和定が食べたい気分だけど・・・・・・ウニ丼定食と秋刀魚づくし定食と松茸ご飯定食か。強いて言えばウニ丼かな。ウニ丼ひとつ」
「かしこまりました」
「九条は?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中華の蟹レタスチャーハンセット」
「かしこまりました。以上でよろしかったですか?」
 本当にレストランそのものの対応である。丁寧にメニューまで下げていった。
 近衛が首をかしげる。
「九条、お前O型?」
「いや、A型」
「あ、そう」
「・・・・・・・・・・・・優柔不断に見えた?」
 知性を漂わせる風貌が破願する。
「いや、随分迷ってたみたいだったから」
 慈恩は首を振った。
「昼から豪華すぎなんだよ。全部定食かセットだし。女の子なんて食べ切れないだろ」
「食べ切れなきゃ、残すだけだろ」
 あっさり言った近衛に、慈恩は一瞬言葉が出てこなかった。
「・・・・・・そりゃそうかもしれないけど。それにしても、今まで昼なんておにぎりとかパンだったから、ギャップが激しくて」
「・・・・・・購買にならあるぞ。本格的なコシヒカリで北海道直送の帆立が具だったりするけど。パンならオープンサンドセットなんかなら・・・・・・」
「ヤキソバパンとかは?」
「・・・・・・見かけないな」
「あ、やっぱり」
 二人で顔を見合わせて苦笑する。気を取り直したように、近衛が知的な瞳を食堂全体に向けた。
「ま、この異常な高校生の食卓に慣れるしかないな。ところで九条」
 視線が慈恩を捉える。
「まだ、入部の返事を聞いてないけど」
 賢明そうな視線の先で、漆黒の瞳が凪いだ。
「今の俺から剣道を取ったら何も残らないよ。だからよろしく、部長。それと」
 淡い微笑みとも取れるその表情は、なんだか少し、悲しそうにも見えた。
「九条、は慣れてないんだ。できたら名前で呼んで欲しい」
 髪に近い栗色の瞳が、微かに細められた。でも、近衛は何も聞かず、ただ頷いた。

「慈恩、だったな。いい名前だ。ぜひそうさせてもらうよ」

 転校初日から結構ウマがあった近衛とは、すぐ親しくなった。何せクラスは同じ、席は隣、部活も同じで実力もそこそこ、お家意識が低い辺りは考え方も近かった。ただ、近衛と付き合うにつれ、彼が完全に己とは別の人格を演じているのを、はっきりと感じ始めた。
 近衛があの屈託ない笑いを見せるのは、慈恩の前だけだ。あとは表面的な微笑みだとか、知性的でお堅い優等生的な笑みで、いつもの彼から見ると、周りに対して表面を取り繕っているように見える。それに、言葉遣いも慈恩以外の人間には徹底して、一線を引いたやや上品なものを選んで使い分ける。
「九条さあ、近衛と一緒にいて、疲れないか?あいつ、いつでもどこでも優等生だから」
 一週間ほども経った頃だろうか。クラスメイトの一人からそう言われて、不思議に思った。
「そうか・・・・・・?あんまりそんな感じ、しないけどなぁ」
 そんなふうに答えて、逆に不思議がられた。
「お前も優等生だから、あまり感じないのかもしれないな。決して悪い奴だとは思わないけど、ちょっと近づき難いところがあるのも、確かだよ」
 そんなクラスメイトの言葉が、二週間もすると納得できるようになった。近衛の優等生面は鉄壁だった。
「あのさ、近衛。桜花祭の伝統芸能のことだけど、能を教えてくれる講師とか、呼べるかな」
「能か。知り合いに詳しい人がいるから当たってみよう。講師料はクラスで徴収だけど、いいかな」
「ねえ、近衛くん。今度の基礎解析のテストだけど、この問題がどうしても解らなくて・・・・・・」
「ああ、これは応用だから、一年で習ったベクトルを活用するんだ」
 近寄り難くはあるが、近衛に相談すれば大概のことを確実に解決してくれるという信頼はあるらしい。近衛に寄ってくる人間は教師も含め、かなり多かったが、そのどの相談にも懇切丁寧に応対するのだ。その時の表情は、真剣な眼差しか優しい微笑みであり、決して負の感情を表に出したりはしなかった。
「慈恩、俺学代の仕事あるんだけど、手伝ってくれないか?」
 そんなある日の放課後、部活に行こうとした慈恩を呼び止めて、近衛が少し苦々しい顔をした。
「何が悲しくて俺だけ残ってやんなきゃならねえのかって思うと、やりきれねえよ。俺が行くまで、どうせお前の相手できる奴いないだろ。だから、手伝ってくれ」
 慈恩は漆黒の瞳を何度か瞬かせた。
「・・・・・・構わないけど。部の方はいいのか?」
 ふん、と鼻で笑って、近衛は嘲笑気味の口調になる。

「形だけでも副部長はいるし、顧問もいるし、コーチしに来る道場の先生もいるだろ。俺一人くらいいなくたってどうにでもなる」
 
この学校や周りの人間に好感をもっていないような言い方だ。普段は非常に積極的に活動や授業に参加しているだけに、慈恩にはその変わりようが不思議だった。けれど、人がいる前ではそんな言動を見せない近衛であるだけに、その辺りを聞いてみたいという好奇心もあって、慈恩は快く引き受けた。
 
仕事というのは、こちらでも近々あるらしい文化祭と体育祭をまとめた桜花祭の出し物に関わるものだった。
「うちのクラスは能をやるんだ。出し物は決まってて、一年が和の食材を扱う。和菓子とか皇室の食卓の再現とか、あと、茶の手もみ体験なんかもある。で、二年が伝統芸能で、毎年狂言、歌舞伎、華道、茶道、和楽器の演奏みたいなのをやる。三年は必ず日本の古典で演劇。平家物語とか、御伽草子とか、毎年なんかテーマが決まってて、学年で分担してやるんだ。初日は前夜祭で、有志の部活とかクラブとかの出し物がある。二日目が一年生の出し物。三日目が二年生の出し物。四日目が三年生の出し物。五日目に体育祭。六日目は半日で表彰式とか、そういうのをまとめてやって、夕方から後夜祭。みんなでパーティーってヤツ。だから、一週間丸まる桜花祭なわけだ。その出し物が、うちのクラスは能ってことで、俺がやらなきゃいけないのは、明日から始まる練習での役割分担と講師の振り分け。おかしいと思わねえか。能をやりたいって言った奴に限って、言いっぱなしで何もしやしない。結局俺に全部回しやがって。講師を頼んだのも俺、講師料集めたのも俺、払うのも俺、誰が誰に教わるのかのスケジュールを作るのも俺。やりたい物語とか役とか、自分たちに興味のあることだけやって満足してるんだ。なあ、どう思う?」
 何も解らない慈恩に丁寧に説明しながらも、彼の手はパソコンのキーを休む暇なく打っている。ここではパソコンが二人にひとつくらいの割合でそろっている。その半分はノートパソコンで、いつでも貸し出しが自由となっている。
 如月祭とはだいぶ違うな、と思いながら聞いていた慈恩だが、最後の問い掛けには少し考えて、感じたままに答えた。
「だって、悠大は嫌な顔ひとつしないで、いつも相談に乗るし、引き受けるだろ?だから、みんなは悠大に頼ればいいと思ってるし、それ以外の苦労をしなきゃいけないなんて、考えてないんじゃないか?」
 パソコンを打つ長い指がぱたりと止まる。知的な瞳が慈恩を捉えた。かなり不満そうだ。
「考えるだろ、普通」
「・・・・・・それが当たり前、に、ここの生徒たちは慣れ過ぎてるよ。例えば食堂のメニュー。和洋中で毎日違うものが三種類ずつ用意されているのが当たり前。誰がそのメニューを考えて、そのためにどれだけのシェフが用意されて、どれだけの費用が費やされていて、どれだけの食材が必要で、それを手に入れるためにどんなルートを使わなきゃいけないのか、なんて、悠大は考える?」
 近衛の栗色の瞳が、訝しげにしかめられる。
「だって、それは俺たちの手でしなきゃならないことじゃない」
 ふ、と慈恩の瞳が優しくなる。
「そう、自分の食べるものを作るのは自分の仕事じゃないと、思ってるからね」
「・・・・・・・・・・・・」
「俺はずっと自分の食事は自分で準備してたから、ここの食堂のメニューは贅沢すぎるって感じる。やったことのある人間は、気づくんだ。でも、多くの生徒は平気でその贅沢なメニューを残す。それが自分のもとに運ばれてくるまでの苦労を知らないからだ。一度でもその過程の苦労を体験していれば、それでは済まないんだって、解るはずだよ」
 近衛の賢そうな瞳が、更に知性的な輝きに満ちる。
「すごいな、お前は。俺は今お前を尊敬した。さすが、俺の見込んだ男だ」
 一体いつの間に見込まれていたのか。慈恩は凛々しい眉根を寄せて首をかしげた。そんな慈恩の肩を力強くたたいて、近衛は頷く。
「そうか、いつも俺は、自分がやるのが一番てっとり早くて効率がいいと思ってた。他人に回すと遅ぇしサボるし思ったのができねえし、気に食わなかったからな。でもそうやって自分が忙しくなるのは、自分が周りを育てることに手を抜いたツケが回ってくるからだったんだな。リーダー失格だなぁ、俺は」
 たかが高校生のクラス長が、周りを育てる、なんて考える辺り、大したリーダーだ。思わず慈恩はくすくす笑った。たちまち知的な男前の顔が不審そうに歪む。
「・・・・・・何がおかしいんだよ」
「いや、きっと悠大は、将来名前の通り器の大きなリーダーになるだろうと思って。それに」
 優しい笑みで不審気な視線を受け止めて、慈恩は続けた。
「くるくる表情の変わる悠大も、優等生なだけの悠大より魅力的だと思うけどね」
 栗色の瞳が大きく見開かれてから、すっと形よく描かれた唇の左が、少し吊り上った。
「家で優等生を保とうと思ったら、ある程度普段から作っておかないとボロが出るんだ。だから、学校はその予行演習さ。それに、俺の本性に同調できる奴は少ないんでね。残念ながら、俺の本当の魅力は今のところ、お前にしか見せられない」
 なぜ自分だけなのか、かすかに疑問が残ったが、その辺りが「見込まれた」ということになるのだろう。慈恩は大きく息を吸い込んで、パソコンの画面に視線を移した。
「残念なのは俺じゃなくて、たぶんお前とお前に関わる人たちだと思うけどね。じゃ、とりあえず目の前のことだけ片付けて、部活に行くとしようか。部長」
 桜花高等学校剣道部の部長は、屈託ない笑みで頷いた。

「おう。任せとけ。あと十分で終わらせる」

   ***

 震える指を握りこむ。三神は、己の理性の強さに感謝と安堵を覚えた。
『やめて、三神っ!』
 拒否された瞬間、激しく傷ついた。と同時に、まだ早かったか、と後悔が押し寄せた。弱っているところに自分の想いを告げ、自分を意識させたかった。あの隠し子の存在を打ち消し、あの心に己の存在を刻み付けて、心も身体も手に入れる。そう考えて行動に出たのだが、思った以上の芯の強さだった。流されてはくれなかった。そのまま無理矢理にでも想いを遂げることは、できたかもしれない。でも、昂ぶる細胞の興奮を、三神は理性を総動員して押さえ込んだ。失敗して全てを失うのは、やはり怖かった。しかし、不幸中の幸いというのだろうか。押さえ込んだおかげで、すり減らされて弱った主人の心は、離れずにすんだ。離れるどころか、傍にいて欲しい、とさえ言ってくれた。その身体を抱き締めながら、三神は幸せな気持ちに包まれた。
 けれど、それで欲望が満たされたわけではなかった。触れるたび、惹かれるたび、突き上げてくる激しい欲情。その度に、こうして震える指を押さえるのも一苦労だった。あの唇をもっと激しく奪いたい。あの白い肌に、自分の痕を残してやりたい。あの華奢な身体を想いのままに貫いてしまいたい。それができたら、どんなに満たされるだろう。どれほどの快感が味わえるだろう。この想いを抱えて、一体どれだけ耐えなければならないのかと思うと、気が遠くなりそうだった。
 その時、ふと三神の脳裏を、一つの考えがよぎった。
「・・・・・・そうだ・・・・・・。起きなければ・・・」
 拳を更に強く握り締める。やや鋭い目に、真剣な光が宿る。
(それなら、心が離れてしまうことも・・・・・・)

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コメント

こういう展開になるんですね。

 続編を待っています。


Dear 人間関係さん
コメント、ありがとうございます!待っていただけているということが、すごく嬉しいです…!この先の展開も、楽しんでいただければ…と思います(><)!
☆蒼 紫月☆

投稿: 人間関係 | 2009年2月21日 (土) 21時19分

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