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三.喘息

 真っ白な病室。街中の騒音すら、外界がこの部屋には関わりなく時を刻んでいることを知らせるだけ。
「斗音。具合はどうだい」
 大きな花束を抱えて、父親と一緒に兄を見舞った。色とりどりの薔薇が、何もなかった病室に、鮮やかな色と香りを添えた。呼吸器をつけた斗音は、にこりと笑って二人を迎えてくれた。
「斗音」
 駆け寄ってのぞき込むと、点滴の針の痕が痛々しい、透けるほど白い腕を布団から出して、細い指で弱々しく、慈恩の頬に触れる。そして、寂しそうに微笑むのだ。
「本、たくさん持ってきたんだ。読みたいって言ってただろ」
 わざと元気に振舞った。この部屋は、斗音の哀しみや寂しさでいつも染められていたから。
「ありがとう、慈恩。ねえ、斗音にあなたの話を聞かせてあげて。ずっとあなたが来るのを待ってたのよ」
 流暢な日本語で、胸にクロスのペンダントをかけた美しい母が、優しく言葉を紡ぐ。信心深かったキリスト教徒の母は、そのペンダントをいつも胸にきらめかせていた。その母に良く似た顔立ちの斗音が、こくりとうなずく。
「俺、今度関東大会に出るんだ」
 小学校一年生から剣道を始めて、四年目。慈恩は既に頭角を現していた。都大会の準決勝戦で相手の六年生の動きがやたら早くて、思わず勝負を急いだらそれが決まってしまったこと、一学年上にやたら大きな強い相手がいたが、小さい分小回りがきいて、決勝戦も何とかしのげたことなどを、一生懸命に話す。まだほんの小学校四年生の息子が、決して自慢するのではなく、事実を楽しく、聞いている者が喜ぶように話すのを、両親は眩しそうに見つめていた。
「すごいな、慈恩。関東大会、見に行きたい」
 斗音の声は擦れている上、呼吸器に阻まれてほとんど聞き取れない。それでも慈恩は大きくうなずく。
「来いよ!退院できなくても、元気だったら外出許可してもらえるって!」
 退院できたらもっといいけど、と付け足したら、父親に黒い髪をくしゃくしゃにされた。
「あんまり無茶言うもんじゃないぞ」
 母は楽しそうに涼やかな声で笑って、薄茶色の斗音の髪を撫でた。
「でも、慈恩の大会が励みになるわね。それまでに少しでも良くなりましょう」
 斗音も蕾が開くような微笑みを浮かべた。

 関東大会の日。父親と二人で会場に向かった。
「斗音、来られるかな」
「うん。お母さんは元気そうなら外出許可取れないか、先生に聞いてみるって言ってたぞ。来られるようなら、お母さんが連れてきてくれることになってる」
「ほんと!?来てくれるといいな。俺、絶対頑張って勝って、あいつを元気付けてやるんだ」
 会場では少年団の先生が待っていた。少年団の友達も、何人か応援に来てくれていた。
「慈恩、頑張れよ!」
「お前なら絶対勝てるって。応援するからな!」
「うん、ありがとな」
 言いながらも、視線を周りに彷徨わせる。しかし、捜し求める姿は見当たらなかった。
(いくらなんでも、まだ早すぎるかな・・・・・・)
 一回戦が始まる直前、一回戦に勝った直後、二回戦が始まる前、二回戦に勝ったそのあと、三回戦が始まるぎりぎりまで、三回戦に見事に二本決めて勝ちを収めたあと、準決勝の始まりの合図が上がるまで、そして、準決勝で、この春の全国大会に出場していた六年生を相手に、一本及ばず敗れた直後も、慈恩はずっと斗音を探していた。でも、双子の兄の姿が慈恩の視界に捉えられることはなかった。
 関東大会三位の見事な成績を収めた慈恩を、表彰式を待たずに父は車に乗せた。
「先生にあとのことは頼んでおいた。病院へ行こう。斗音に、今日のことを報告しよう」
 兄が来られなかったというのは、よく分かっていた。そして、今日兄の発作が起きたのだということをすぐに悟った。
「大丈夫なの!?」
「お前が元気付けてやるんだろう?」

 父親の強い声に、慈恩は唇を噛んだ。
「うん!」

 いつもに増して殺風景な、外の景色すら見えない部屋に、斗音は寝かされていた。腕のチューブといつもより強力そうな呼吸器のマスクが痛々しかった。
「ごめんなさいね、慈恩。大会に行ってあげられなくて・・・・・・」
 母が申し訳なさそうに言った。
「今は?」
 父親がガラス越しに我が子の姿をのぞく。
「泣き疲れて眠ってるわ」
「入って、いい?」
 慈恩がはやる心を目一杯表情に載せると、金色の髪を揺らして母がうなずいた。
 そっと中に入ると、耳が痛いほどの静けさが慈恩を襲った。なんだかその静けさを壊してはいけないような気がして、足音すら気遣いながら、ベッドの脇に近づく。
 天使のように綺麗な顔には血の気がなくて、頬には幾筋もの涙の跡がそのままになっていた。長い睫毛もまだぐっしょり濡れている。
(苦しかったんだろうな・・・・・・)
 そっと額に張り付いた髪を分ける。
「・・・・・・斗音」
(かわいそうに・・・・・・・・・・・・)
 持っていたハンカチで、慈恩はそっと涙の跡をなぞった。
 それをガラス越しに見ていた両親が、言葉を交わしていたことを、慈恩は知らない。
「ひどい発作だったのか」
「見てる方はこのまま死んじゃうんじゃないかと思って、気が気じゃなかったわ。でもね、斗音は苦しくて泣いたんじゃないの。慈恩の試合を見にいけなかったことが悔しくて、泣いたのよ。ひどく泣いて・・・・・・泣き疲れて眠ってしまったわ」
「楽しみにしてたからな。慈恩は斗音の憧れなんだ。健康で強くて何でもできて・・・・・・斗音は慈恩が双子の弟であることが誇りなんだな」

「ええ・・・・・・あの子は慈恩のことが大好きよ」
「・・・・・・・・・・・・慈恩がいてくれてよかった。きっとあの子はこれから先も斗音を支えてくれる」
「あの子を私たちの元へ授けてくださった神様に、感謝しましょう」
 美しいフランス人の母は、ガラス越しに二人を見つめて、胸のクロスをそっと手の平に包み込んだ。

 夜になって、斗音はいつもの個室に移された。集中治療室での手当てが功を奏したのか、一時的に呼吸器も外されている。両親はともに医者の説明を別室で聞いている。夏とはいえ、病院内は冷暖房完備なので、全く暑いとは感じない。慈恩はベッドの脇に腰掛けて、暑いはずの暗い外を眺める。春から夏に移ったことすら感じられない毎日を、斗音は送っているのだと知る。
 不意に斗音が慈恩の袖をつかんで、くいくい、と引っ張った。
「あ、起きた?」
 こくりと小さな頭を縦に振って、更に引っ張る。慈恩はベッドの脇に膝をついて、斗音の口元に耳を近づける。
「試合、どうだった?」
 聞き取れないほど擦れてしまった声が痛々しくて、慈恩は何かこみ上げてくるものを無理やり飲み込んだ。とっさに元気な笑顔を見せる。
「俺、三位。準決勝まで行ったんだけど、相手が強くってさ。さっき純平から聞いたけど、そいつ優勝したって。1-0で負けた。でも、すげー惜しかったんだよ。ラスト五秒くらいでかなり追い込んで、あと一歩で一本いけそうだったんだ。決めらんなくって、結局ダメだったんだけど」
 見せたかった、と言いそうになって、慈恩は口をつぐむ。一瞬置いてから、改めて続けた。
「でも、全国にいけるよ。今度はもっともっと稽古して、あいつに勝ってやる。今日みたいなかっこ悪いの、お前に見せられないからさ。今度こそ絶対見せられるような試合にするから、だから」
 慈恩はその続きの言葉を思わず飲み込んでしまった。華奢な腕が弱いながらも懸命な力で、慈恩の首に巻きついていた。そっと背中に手を回すと、その背は細かく震えていた。
(泣いて・・・・・・)
 耳元で、音になるかならないかという声が、嗚咽混じりに聞こえた。
「ごめ・・・行けなく・・・て・・・・・・ごめん・・・・・・」
(斗音-------)
「いいよ、斗音。俺、次にお前にもっといいとこ見せられるように頑張るよ。だから・・・」
 泣かなくていいよ、と優しく頭を撫でる。
「お前がいつでも見に来られるように、俺強くなって絶対上の大会に勝ち進めるようにするから。あせらなくていいよ」
 慈恩は自分が泣きそうになるのを必死でこらえた。柔らかな髪を撫でながら、自分にしがみついて泣きじゃくるこの兄を、何とか励ましてやりたいと思った。自分にできることなら、何でもしてやりたいと思った。心の底から、そう思った。

   ***

 斗音は約十ヶ月の入院生活を経て、ようやく退院することができた。小学校三年生の三月にひどい発作を起こして入院してから、結局四年生の一月まで、病院で過ごしたことになる。更にその後一ヶ月は自宅療養で学校に通うことはもちろん、スポーツなども全て禁止され、やりたいことがありすぎる時期にほとんど何もできずにいた。あまり動かずにできるものということで、ピアノを買ってもらって、何かができることの喜びを覚えた斗音は、ピアノに夢中になった。ピアノを弾くと母が喜ぶので、一生懸命練習するうち、斗音の腕はぐんぐん伸びていった。慈恩はその間、斗音に教える分も人一倍勉強を頑張ったし、剣道は小学生の大会でその名を全国に轟かせるようになっていた。
 
そんな慈恩を心の支えにして、斗音は回復してからというもの、今までできなかった分の反動かと思うほど何にでも積極的に取り組んだ。さすがにスポーツだけは、必要以上にさせてもらえなかったが、友達と遊ぶことも、勉強することも。そしてピアノはちゃんと先生について習うようになった。持ち前のリーダー性も思う存分発揮して、色々な役割にも挑戦した。明るくて元気が良くて、誰にでも公平に接して、友達を大切にして・・・・・・。そんな斗音は、誰からも好かれた。たちまち周りからの強い信頼を得て、小学校六年生になるときには、児童会長を務めるほどだった。時折発作を起こして、みんなの不安を掻き立てることはあったが、それを含めても、誰もが斗音を認めていた。もちろん、慈恩は慈恩で勉強は人並み外れてできたし、剣道でならした腕には誰もが一目を置いていた。
 
しかし、椎名家には次の試練が圧し掛かってきていた。もともと持病で喘息を患っていた母が、軽い風邪をこじらせて入院してしまったのだ。まだ二人が六年生になって一月も経たない頃だった。
「大丈夫よ。ただの風邪だもの・・・・・・すぐよくなるわ。迷惑掛けてごめんなさいね」
 見舞いに行くたびに、クロスに手を置いて優しく微笑んでそう言っていた母。誰もがそれを信じて、疑わなかった。帰りが遅い父に代わって、毎日少年団の練習があって早くに家を出なければならない慈恩が夕食を作り、斗音は片付けるようにしていた。
 見舞い三昧だったゴールデンウィークも過ぎ、久しぶりの学校で慈恩が算数の授業を受けていたとき、教頭先生が教室に現れた。呼ばれて廊下に出ると、既に呼ばれて荷物をまとめていた斗音が、不安そうな顔を隠しきれずに、慈恩を見つめた。教頭先生は、母親の容態が急変したことを告げ、二人にすぐさま帰る準備をするように言った。
 二人は教頭先生の車に乗せられて、母が入院している病院へ向かった。玄関先に父の車が止めてあった。
 病室まで、二人は全力で走った。心の中で、いつも母の言っていた言葉を繰り返し、不安を打ち消そうとした。互いに不安も、それを打ち消す言葉も同じだということは、嫌というほど分かっていたから、一言も話さなかった。
 病室に駆け込んだ時、目に映ったのは、二人の医者が必死に「大丈夫ですか、意識をしっかり持ってください!」と、怒鳴っている姿、悲痛な声で母の名を呼び続けている父。そして母は、いつもの雪のような白い肌を青白く変化させ、苦しげに父の手を握り返していた。
「母さん!!」
 二人とも、尋常ならざる状態であることは、すぐに分かった。ベッドに駆け寄って、父の手を握り締める母の手を、更にきつく握り締める。
「母さん、母さんっ!!」
 慈恩が叫ぶ横で、斗音はがたがた震えながら、首を振った。
「大丈夫だよ、母さん、大丈夫・・・・・・ここさえ乗り切ったら、すぐ楽になるからっ・・・・・・!!」
 医者が母の喉に管を通しながら、片方で看護師から受け取った注射をする。
「先生、駄目です、粘膜で完全に気管が塞がってます!!」
 チューブを通す手伝いをしている看護士が、悲鳴を上げる。
「先生、どうして!!いつもならこれで治まるのに・・・・・・!」
 父親の責めるような声に、貫禄のあるほうの医者が苦い顔をする。
「こじらせている風邪から肺炎を起こしています。熱もひどくて身体が敏感になっているんです。だから、薬にすら拒否反応を起こしています。普段なら有り得ないんですが・・・・・・抵抗力自体もひどく低下していて、体力もない。今打った注射が効くまで・・・・・・何とか呼吸を確保しないと・・・・・・!」
「粘膜をこじ開けましょう!」
 若い方の医師が縋るように叫ぶ。言われた方の医師は、父親の顔を見た。
「傷つけることになると思います。でも、この場は持ち直すかもしれない。無理やり気管を開きますが、了解をいただけますか」
 父親は苦しそうにうなずいた。直ちに貫禄ある医者が看護師ともう一人の医者に指示を出し、母の身体を押さえつけて、喉にもう一つの管のようなものを通し始めた。母の苦しみ方がいっそうひどくなった。
「母さん、頑張って!!頑張って!!今楽になるから、頑張って!!」
 斗音が声を枯らして叫んだ。不安で胸が張り裂けそうだった。その時間が、一時間にも二時間にも感じられた。もがいていた母の身体から、ゆっくり力が抜けていった。
「ノエル!」
 父の声に、母が小さく反応する。そしてそのままふっと目を閉じた。一瞬室内に不安が満ちるが、年配の医師がほっと息をついてその不安を打ち消してくれた。
「とりあえず、この場は持ったようです。今は意識を失っているだけです」
 だが、その後に続いた言葉は、更なる不安を掻き立てた。
「でも、この状態でもう一度発作が起これば・・・・・・危険でしょう。その時は・・・・・・覚悟してください」
 全員が、言葉を飲み込んだ。ただ一人、斗音がぽつりと言った。
「発作が起きる確率は・・・・・・?」
 医師は苦しそうに顔を歪めた。
「なんとも言えませんが・・・・・・非常に高いことは、確かでしょう」

 夕方に、母は一度意識を取り戻した。誰も医者に聞いたことを母に告げることはなかったが、母自身が何かを感じていたらしかった。まず、父の名を擦れた声で呼んだ。父がベッドの脇に寄って母に顔を近づけた。
「絽登(ろと)・・・・・・斗音と、慈恩のことをお願い・・・・・・。二人とも・・・・・・私の自慢の・・・・・・大切な・・・子・・・・・・」
「分かってる。大丈夫だ。心配要らない。だから、お前は元気になることだけ考えていればいい」
 父の声が震えていた。母は、微かに微笑んだ。
「ありがとう・・・・・・。・・・・・・斗音。・・・おいで」
 呼ばれた斗音がベッドの脇にひざまずく。そのアッシュのやわらかい髪を、母は優しくなでた。
「可愛い・・・・・・斗音。・・・愛してるわ。・・・・・・ごめんね・・・・・・健康な身体に・・・・・・産んで、あげられなくて・・・・・・」
 斗音は激しく首を横に振った。
「そのおかげで、俺ピアノ弾けるようになったんだから。家に帰ったら、また弾いてあげるからね。それからさ、俺、中学になったら絶対スポーツやって、体力つけるんだ。慈恩みたいに、強くなって、みせる。大丈夫だよ。先生も、中学校になったらやっていいって。だから、そしたら慈恩の時みたいに、お弁当もって見に来て・・・・・・」
 目を潤ませる自分の息子を、いとおしそうに目を細めて見つめた。その視線を、慈恩に移す。
「慈恩・・・・・・いらっしゃい」
 そっと慈恩が近づくと、母はゆっくり身体を起こして、既に170㎝近かったすらりとしたその身体を優しく抱きしめた。
「あなたには・・・・・・頼ってばかり、いたわ。・・・・・・斗音のことも・・・・・・家のことも・・・・・・。慈恩・・・・・・あなたがいてくれて・・・・・・よかった。・・・・・・あなたの強さなら・・・・・・この先、何があっても・・・・・・きっと乗り越えられる。・・・・・・愛してるわ、慈恩」
 慈恩は力強くうなずいた。それしかできなかった。やつれた母は、クロスのペンダントを外して、慈恩に握らせた。

「・・・・・・あなたのこと、何も・・・・・・構ってあげられなかった・・・・・・ごめんね。・・・・・・これは私たちと・・・・・・あなたをつなぐものよ・・・・・・。これからはあなたが・・・・・・私の代わりに・・・・・・斗音を・・・・・・支えてあげてね・・・・・・」
 
喉元に熱い何かが込み上げてきて、慈恩は苦しさに整った顔を歪めた。歪めながら再度うなずいた。
 
それを確認するようにして微笑むと、最後にもう一度、母は父を呼んだ。
「・・・・・・ごめんなさい、絽登・・・・・・ごめんなさい。・・・・・・・・・・・・ごめんなさい」
 父は華奢な母を抱きしめた。
「もういい、ノエル」
「絽登・・・・・・愛してるわ」
「・・・・・・ああ。愛してる」
 父の目から涙が溢れるのを、二人は見ないふりをしていた。母の死を認めてしまうようで、怖かった。

 そして、その日の夜。家族の祈りも願いも空しく、再び母は発作を起こした。駆けつけた医師の懸命の処置も、今度は報われることはなかった。次の日を迎えることなく、母は息を引き取った。
 
冷たくなっていく母の身体にすがり付いて号泣する父を見ていられず、慈恩は母に渡されたクロスを握り締めたまま、目を逸らしていた。斗音がそんな慈恩の腕を引いて、外へ連れ出した。深夜である。患者たちのくつろぎの場になるよう、机や椅子を設けてある自販機コーナーも、静まり返っていた。
「何か、飲もうか」
 ポケットから小銭を取り出して、斗音が言った。ハスキーな声が、静まり返った空間に響いた。
「何がいい?」
 慈恩は答えられなかった。つらくて、それどころではなかった。
「ねえ、何がいい?」
 涙でぼやけてまともに飲み物の種類を見ることすらできないのに、どうして選べるだろう。慈恩はうつむいた。
「何がいいって、聞いてるだろ」
 苛立ちを含んだ声に、慈恩がはっとして斗音を見つめる。その視線の先で、斗音はきっと慈恩を睨んでいた。
「何で返事しないんだよ」
 慈恩は唇を噛んだ。
「・・・そんな気に、なれない」
 言った瞬間、いくつかの百円玉が飛んできて、思わず腕を上げてぎゅっと目を閉じた。腕にばらばらと硬いものがぶつかって、床で金属音を立てる。
「・・・・・・母さんは、あの地獄の苦しみから永遠に解放されたんだ!もう、苦しまなくていいんだよ・・・・・・っ!」
 目を開いた慈恩に投げつけられた斗音の言葉は、激しかった。でも、そこにあるのは怒りではなくて、壮絶な悲しみだった。斗音の薄茶の瞳からは、あとからあとから涙が溢れていた。
「もう・・・・・・苦しまなくて・・・・・・・・・いいんだ・・・・・・」
 そして、慈恩の袖をぐっとつかんだ。その仕草に、悲しみに耐えようとしている斗音の気持ちを痛いほど感じた。十ヶ月間の一番苦しかった時、一番心細かった時、いつも側にいてくれた母親だったのだ。つらくないはずがなかった。うつむいて、ぽろぽろ涙を床にこぼす斗音を、慈恩は思い切り抱きしめた。込み上げてくる涙は、もう止めようがなかった。

 斗音はそれから約一年の間、ピアノに決して触れようとはしなかった。

   ***

 斗音が部活中に発作で倒れたと聞いた慈恩は、かすかに眉根を寄せて斗音を見つめた。
「・・・・・・今は?」
「もう平気」
 にこっと笑って見せた斗音の声は、やはりいつもよりずっと擦れていて、慈恩の表情を曇らせた。
「大丈夫だよ。軽い発作だったし」
 いつも以上に明るく振舞う斗音に、嵐が声を掛けた。
「あんまり無茶すると、また発作起こすぞ。慈恩は心配してくれてんだ。今日くらい甘えとけよ」
 瞬の、そうだよ、と言う声と、翔一郎のそうだぞ、と言う声が見事にハモる。この二人、思考回路とタイミングがよく似ているらしい。
「甘えなくても、俺今日は何もさせてもらえないよ」
 ふざけた口調で言って慈恩にちらりと視線を流す斗音だが、思いっきり本音であることがよく分かる。
「分かってるなら、今日は夜遅くまで読書するんじゃないぞ」
 しかめっ面をして見せる慈恩もふざけた口調だが、前日の夜に三時まで本を読んでいたことがばれていたと知って、斗音は肩をすくめた。
「起こさないようにしてたのに」
「隣の部屋の明かりが煌々とついてれば、誰だって気づくだろ」
「だって、スタンドの灯りだけだと目が悪くなるって怒るじゃん」
「実際それを繰り返して視力を低下させた実績があるだろ」
 そのやり取りを聞きながら、嵐はおかしそうに肩を揺らした。
「副会長も慈恩には形無しだな」
 瞬も可愛らしく声を立てて笑う。
「慈恩、完全に斗音の保護者だよね」
 翔一郎も精悍な顔を崩して、爆笑している。
「慈恩の方がどう見ても兄貴だな。まさしく逆転だ」
 斗音が口を尖らせた。
「いいんだよ。自覚してるから」
 そんな顔でも、通りすがりの一般の人が見て十中八九振り返るくらい、綺麗で可愛らしい。なんにしても、本当に元気そうなのが、慈恩には一番ありがたいことだった。
 三人と別れて、家にたどり着いたのは七時を過ぎていた。斗音は慈恩に言われる前に、風呂を入れ始めた。
「湯かげん気をつけろよ」
「分かってるよ」

 慈恩が奥に向かって投げかけた言葉に、浴室独特の響きを伴った、斗音の三割り増しハスキーボイスが返ってきた。
 
冬でも汗だくになる剣道部は、汗で防具や道着から移る藍染めの匂いに悩まされる。剣道部が実績を残していることや、夜間に社会人体育で使うこともあり、剣道場にはシャワー室が設けられているが、色々な部と共同で体育館を使うバスケ部には、そんなものはない。もちろん、汗を流すだけなので、剣道部とはいえ慈恩も家に帰ったらシャワーなり風呂なり、入らないわけにはいかないが。
 
その間に、慈恩は米を研ぎ、炊飯器のスイッチを入れ、さっさと洗濯物を入れてたたみ、夕食の準備をし始める。片方のコンロで鶏がらスープの素を入れ、煮立たせる傍ら、豆腐をざっくりと切って、ひき肉をいため、ねぎを加えて味噌や豆板醤などで味をつけ、鷹の爪を加える。炒めながら、ミズナを洗い、ざくざくと切って解凍しておいたむきえびを茹でて合わせ、ガラス皿に入れてマヨネーズで和える。そこまでやったところで斗音が戻ってきた。

「上がったよ・・・・・・。何か手伝う?」
 のぞきこんでくる斗音に、食器棚を指し示す。

「大皿ひとつ、取り皿二つ、スープカップ二つ、スープ用のスプーン二つ、茶碗が二つ、湯飲みが二つ、箸が二つ、あと、レンゲが二つ欲しいな」
 一度言っただけだったが、斗音は分かった!と張り切って言われたものを準備し始めた。その間に慈恩は作っているものの仕上げにかかる。スープが沸騰したところでわずかに水溶き片栗粉を加え、溶き卵を加える。更にもう片方の中華鍋に豆腐を加え、豪快に炒めると、仕上げに軽くごま油をふりかける。斗音が用意した皿に、麻婆豆腐、卵スープをよそう。斗音はご飯をつけて、お茶を入れた。
「中華だね」
「チャーハンにしたら完璧だろうけど、油分が多すぎるし、味が濃いからな。品数が少なくて悪いけど」
「どこがだよ」
 思わず斗音が言葉をこぼす。
「食欲は?」
「これを前にして食欲が湧かない人、いないと思う」
 自分が作るときとは大違いだ、と斗音がぼやく。
「病人食じゃないけど・・・・・・大丈夫だよな?」
「平気だって。発作のたびにお粥なんて、おなかすいて死んじゃうよ」
 嬉しそうに、せっせと皿を並べて、斗音が椅子に座る。
「せっかくだから、冷めないうちに食べようよ」
 慈恩に催促をして、弟が座るや否や、手を合わせた。
「いただきますっ」
「いただきます・・・・・・急いで食べると大変なことになるんだから、ゆっくりな」
 どこまでも保護者な慈恩に、斗音は苦笑した。
「分かってるよ。発作起きた日にむせるような真似、しないって」
 たった一度、むせるだけでも、斗音の場合は発作の引き金になる確率が非常に高い。だから、普段から物を口に入れることには、とても気を遣う。
 食事が済んで、後片付けをすると主張した斗音だったが、慈恩は首を振った。
「駄目。風呂冷めしないうちに、早く薬飲んで、今日はもう寝るんだ」
(やっぱり)
 慈恩は過保護だ、と、きっと誰が見ても言うだろう。斗音も、時々それを思わなくもない。でも、慈恩がそういった行動を取る理由を、斗音は嫌というほど分かっている。
「ね、慈恩。宿題があるんだけど」
 言外に、もう少し起きていたいと、嵐たちの言葉を意識したわけではないが、ちょっと甘えてみる。
「何が出てる?」
 早速片づけを手際よく始めながら、慈恩が聞く。
「基礎解析」
「すぐできるだろ。三十分もあれば」
「えっ、無理無理。だって、基礎解析、明日単元テストなんだ。一応全部復習しておかないと」
 慈恩は眉をしかめる。こういうところで手を抜く斗音ではない。まして、斗音は人並み以上に勉強できるとはいえ、数学や物理はあまり得意ではなく、慎重にならないわけがないのだ。
「でも、今日は無理しちゃ駄目だ。分からないところだけにして・・・・・・」
「俺が数学あんまり好きじゃないこと、知ってるよね?」
 じいっと見上げる斗音の目は、正当な理由を盾にして、完全に甘えモードになっている。
「・・・・・・・・・・・・」
 慈恩は斗音のこの目に弱い。何かをしたいという斗音を、なるべく縛りたくないという気持ちも、持ち合わせているからだ。
「好きじゃなくても、お前ならできるだろ?」
 片づけを終えて、タオルで手を拭きながら、斗音をなだめにかかる。
「さあ?」
 悪戯な瞳は、完全に楽しんでいる。斗音にしてみればダメもとで、OKが出たらラッキーなのだ。慈恩は眉根を寄せて、漆黒の髪をくしゃくしゃかき乱した。
「お前、楽しんでるだろ」
 斗音はくすっと笑った。悪戯っ子の笑いではなく、どちらかと言うと、それは弟を思う兄のものだった。
「ごめん。甘えてみたかっただけ。お前が俺のことを思って言ってくれてるのは、分かってるよ」
 三十分でできるだけやったら、ちゃんと寝る、と言って微笑んだ

 慈恩がちょっとぬるめの風呂から出て居間に戻ると、パジャマに着替えた斗音が一心不乱に勉強をしていた。慈恩が出てきたのに気づいて、ふと綺麗な顔を上げる。
「あ・・・・・・もう三十分・・・・・・だね・・・・・・」
 顔一杯に未練がましさを浮かべて、つぶやいた。まだ納得がいっていないのだろう。でも、パタパタとノートや教科書を閉じた。
「もう、寝るよ。・・・・・・・・・慈恩、おやすみ・・・」
 たくさんのテキストや問題集を抱えて、立ち上がる。慈恩はタオルをハンガーに掛け、その荷物を半分取り上げた。
「持ってくよ」
「・・・・・・あ、ありがと」
 きょとんとした顔で、斗音は慈恩を見た。
 斗音の部屋まで来ると、慈恩は持ってきた勉強道具を机にそっと置いた。斗音は言われる前に、ベッドにもぐりこむ。
「・・・・・・慈恩。・・・・・・今日は心配かけてごめん」
 目の下まですっぽり布団をかぶって、薄茶の大きな瞳だけを慈恩に向ける。慈恩はちらりとそっちを見て、机の上に置いたノートなどを広げて見ている。
「・・・・・・分からないところはなかった?」
 斗音はしばらく間をおいてから、布団の中で、ううん、とこもった声で否定した。
「答え見れば分かるんだけど、同じような問題でちょっとパターン変えられると・・・・・・自信ないな」
「・・・・・・どの問題?」
 テキストを差し出す。それを受け取り、斗音はぱらぱらとページをめくって、枕元に置く。
「これ。グラフがいくつかあるパターンなんだけど、どの問題でどのグラフが必要になるのか、答えを見ればその必要性が分かるんだけど、答え見ないと思いつかないんだ。こういう場合、どうしたらいいと思う?」
 慈恩はそれをしばらく見つめ、机でさらさらとノートにグラフや式を書き始める。そして、椅子を枕元まで持ってきて、改めてそこに座る。
「ここで見えるか?」
「・・・・・・うん」
 斗音は寝返りを打って、枕元に置かれたノートをのぞき込んだ。
「この式の場合、変域はどうなると思う?」
「・・・・・・yは・・・・・・えーと、ちょっとシャーペン貸して」
 こうなって、この場合が・・・などとつぶやきながら、慈恩が書いたところに付け足していく。
「これでいい?」
「ほとんど出てきたな。でも、これは大なりイコールだから、この場合もあるわけだ」
 言いながら、慈恩が書き足す。斗音が悔しそうな顔をする。
「あ、そうだ。それ、絶対に見落とすんだよなあ」
「イコールがついてる場合は要注意だ。もうひとつないか、必ず確認すること。じゃあ、この式の場合は?」
「これは、こっちが大なりで、こっちが大なりイコールだから・・・・・・」
「うん、それでいい。じゃあ、グラフ書くとどうなる?」
「yが4のときにxの値が・・・・・・こうで、変域に合わせてこのグラフはここまで。もうひとつは・・・・・・」
「この点はイコールだから・・・」
「含める、で黒だよね。と言うことは、この式の値はこれだけ?」
「そう。これで正解だ」
「そっか・・・・・・うん、これは分かった。大丈夫」
 言ってから、斗音はふわりと微笑んだ。
「・・・ありがと」
 慈恩は何瞬かの間、言葉に詰まっていたが、少し翳りのある笑みを返した。
「・・・・・・・・・・・・できないつらさを、お前にはもう味わわせたくない」
 慈恩の言葉に斗音が軽く目を見開く。
「・・・・・そのために俺にできることがあるなら、何でもする」
「・・・・・・慈恩・・・・・・」
 静かに、でもそう言い切った双子の弟の、真摯な漆黒の瞳を斗音は見つめた。
(もしかして・・・・・・もしかして俺は)
「・・・・・・あり・・・がと・・・・・・」
(・・・・・・慈恩の足枷になってる・・・・・・・・・・・・?)
 斗音は突如心の中に湧き上がった不安を押し殺すように、微笑んで見せた。

   ***

 翌日の登校を、慈恩は心配した。発作のこともあったが、昨日の如月祭の発表のことも気にかかっていた。斗音が野次に負けないと言ったのは信じている。でも、ストレスが喘息に良くないことも確かだったのだ。斗音は全く気にもしていなかったのだが。
 しかし、現実は思ったよりも厳しいものがあった。人というものは、「自分より下」(この場合は年下ということになるのだが)だと思っていた人物に、自分の不愉快の原因を作られたと思うと、その相手がひどく腹立たしく思えるものらしい。学力では優秀な如月の生徒でも、例外でない者は多かった。
「小生意気な副会長さんのお出ましだぜ」
 意地の悪い言葉と刺すような視線が、校門をくぐった瞬間に飛んできた。軽音楽部が使っている三階の音楽室辺りからである。慈恩が窓際でこちらを見下ろしている何人かを視界に捉え、眉根を寄せる。
 嫌な人物だと決めてかかると、今まで見えていなかったことや、気にもなっていなかったことですら悪く見えてくるようで、今まで聞いたこともないような中傷が斗音に浴びせられた。
「すました顔してるよな。ハーフだっけ」
「弟をいつも従えてるんだよな。身体が弱いとか何とか言って」
「だって、軟弱そうだろ、どう見ても」
 聞こえるように言うのが醜い、と慈恩は思う。しかも、外見だけで中身の伴わないこと。全く愚かだと思う。ちらりと斗音をうかがうと、多少硬い表情になっているようだが、自分なりのバリアーを張っているように見える。
「弟は強いもんな。虎の威を借る・・・・・・ってやつ?」
「でも、影に隠れてんじゃねえからさあ。それを下僕扱いしてんだぜ」
 そんな声が聞こえた瞬間、慈恩は声の発信源に向けた視線に殺気を込めた。その視線に刺された一人の男子生徒が、その迫力に一瞬で色を失う。
「慈恩」
 ぐい、と腕を引っ張られて、慈恩は兄を振り返った。
「敵増やしてどうすんの」
 苦笑だろうか。斗音は微かに笑みを浮かべている。
「言わせとけばいい。俺は俺だよ」
 淡い微笑みがなんだか消えてしまいそうなのに、意志の強い言葉は揺るぎない。その不思議な力に押されて、慈恩は心臓が大きく、脈を打ったのを感じた。純粋に、斗音に尊敬の思いを抱く。
 突如、二人の首に長い腕が絡まった。
「よっ」
 二人の間からさらさらっと淡紫色の髪が揺れる。慈恩よりやや身長の高い嵐が、二人に交互に笑みを送る。
「元気か、斗音」
 斗音がにっこり笑った。

「うん」
「慈恩、お前が殺気立つなよ。お前も執行部だろ」
 慈恩が見つめると、嵐はにやりと笑った。
「俺もあれをのさばらせておく気にはなれねえけど、ま、俺が殺気立つ分には構わねえか」
 言って、音楽室の方を見上げる。嵐は大きく息を吸い込んだ。
「よお、あんたら冴えねえバンド組んでる伊東さん、森野さん、井戸さんだよな」
 名前を呼ばれた窓際の三人はぎょっとしてあとずさる。嵐のいい声はよく透る。おまけに人並み外れたというよりは、異常な記憶力から、ちょっとでも聞いたことは忘れない。正確に言えば、普段はすっぱりと忘れているのだが、これまた異常な集中力で自分の記憶を自在に引き出すことができるのだ。全校生徒の名前くらい、恐らくその頭の中に全て記憶されている。
「今日は下衆野郎がいつもより多い気がするけど、あんたらもその類かい」
 慈恩に劣らない殺気を込めた視線を、こちらは不敵な笑みに載せて送る。その端正な顔に、楽しみながら、本当に殺しに行きそうな雰囲気を湛えている。
「自分らが冴えないからって、他の人間中傷か。そんなんだから冴えねえんだよ、あんたら」
 核心の図星を痛烈な言葉で皮肉られ、窓際にいた三人はよろめくように、視界から消えた。それなりにプライドのある如月の生徒である。間違いなく精神的に大ダメージをこうむっているだろう。はっきり言って、絶対に敵に回したくないタイプである。
(本気で殺しにいったな)
 慈恩は苦笑する。自分も嵐くらいの力があれば、と思うのだが、そうもいかない。嵐は全てにおいて別格なのだ。全校生徒で、この淡紫色の髪を持つ異端児を知らない者は皆無で、三年生ですら恐らく、彼に敵う者はない。今の言葉を聞いていた人間であれば、二度と斗音を中傷しようとは思わないだろう。それを、わざと校庭から校舎の三階までの距離を置いてやってのけたのは、間違いなく嵐の作戦である。嵐の声量がなければ、できないことだ。
「ありがと」
 斗音が囁く。嵐は軽く首を振る。
「慈恩がやりたかったことをやっただけ。でも、これで収まるとも思えねえからな。しばらくは嫌な思いすること、あると思うぜ」
 決して軽はずみなことは言わない。斗音はうなずいた。
「うん、分かってる」
「ま、慈恩が守ろうとするんだろうけど」
 すらりとした体躯の嵐にその凛とした眼差しを向けられて、慈恩は苦笑いである。
「分かってるよ。後先のことは考える」
「お前、本気で怒ると見境なく相手殺しそうな気がするからなあ」
(いや、お前だよ)

 双子はこの恩人に、同時に心の中で突っ込んだ。

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